公開日:2016年9月20日

消化管切除術後栄養指導パンフレット作成法

目次

消化管切除術後栄養指導パンフレット作成法 はじめに

消化管とは口から肛門までつながっている1本の管で、口腔、食道、胃、小腸、大腸を指します。

悪性腫瘍(良性含む)、潰瘍等の疾患で切除せざるを得ない状況になった患者の手術前後に栄養指導が行われ、ベッドサイドで行うケースが大半です。

消化管切除術は クリティカルパス等で、栄養指導のタイミングが明記されている 事が多くあります。

術前に正しい食事療法を行うことで、術後経過を良好に保つことができます。また、術後の細やかな栄養指導で退院後も健常者と変わらず安定した生活を送ることができます。

外科的疾患、病態、治療についての知識が十分に備わっていない栄養士も少なくありません。 治療法の基本についての学びを深めるとともに、患者の状態に合わせた個別での栄養指導ができるようにしましょう。

食道

術前

原則として高エネルギー・高たんぱく質食を提供しますが、経口摂取が困難な場合は高カロリー輸液や経腸栄養法で管理 します。

手術前から経口摂取量が少なく栄養状態が不良のケースが多くみられる為、 術前栄養補給は必須 です。術前栄養管理が術後合併症の予防に有用であることを患者に説明します。

術後

術後10日程度絶食となります。

可能であればVF(嚥下造影検査)で誤嚥等見られないか確認後、食形態を決定できると良い ですが、基本的には流動食から提供し、徐々に低残渣食を提供します。

食事摂取時に誤嚥が見られる場合は嚥下食(嚥下ピラミッド学会分類2013に準じる)を提供します。

退院後

経口摂取が可能となっても、消化管構造の変化で十分な栄養補給ができるようになるには数か月要することを十分に説明しておきましょう。

また、経口摂取のみで栄養補給が難しい場合経腸栄養による栄養補給は重要であることもきちんと説明し、納得できるように指導しましょう。

食道切除術は解剖学的理由から侵襲が大きい手術になります。栄養療法はとても重要なのですよ。

患者さんに消化管の構造の変化を説明し、効率のいい食事摂取法や食習慣を変えていく必要なども十分栄養指導ができるようにならないといけないのですね。

引用元:NPO法人PEGドクターズネットワーク

胃・十二指腸(小腸)

術前

原則として高エネルギー・高たんぱく質食を提供 しますが、経口摂取が困難な場合は高カロリー輸液、経腸栄養、経鼻栄養等を行うこともあります。

術前に経口摂取が十分できており、栄養状態に問題がなければ術前栄養補給は行わないことも多いです。

術後

食事の開始時期

胃を全て摘出する全摘術、80%程度を切除する亜全摘術、部分的に切除する部分切除術 とあります。 切除する範囲によって食事の開始時期が異なります。

クリティカルパスで栄養指導が入るタイミングは施設によって異なりますが、食事が始まり、三分粥にアップするタイミングで病室訪問を行い、簡単に食事の説明をしてから、五分粥が始まる頃に栄養指導を行うと安心感を持たれやすいようです。

また、入院中は食事療法の具体的な方法や術後症候群の対処法の説明も必要であり、患者の不安感を軽減させることにもつながるので最低でも2回は栄養指導を行えるようにしましょう。

全摘術

6~10日程度絶食となります。

(b)亜全摘術

4~5日程度絶食となります。

(c)部分切除

1~3日程度絶食となります。

基本的食事療法

(a)栄養

高エネルギー、高たんぱく質、高ビタミン食で消化・吸収の良い低残渣食を提供 します。

目安として最低でも エネルギー1200㎉、たんぱく質60g程度摂取できると良い ですが、十分なエネルギー摂取は難しいケースが多いです。

不足分は栄養補助食品等を利用 します。

退院前にはエネルギー1800~2000㎉、たんぱく質75~85g、糖質40~45g、脂質300g、ビタミン、ミネラルは所要量に準じ、提供できるのが望ましい ですが、食べなくては良くならないという 不安感が強い患者に無理強いはしません。

場合によっては主治医と相談のうえ、嗜好に添った内容で栄養指導を行うことも良いでしょう。

(b)分割食

術後1か月程度は分食(5~6回食)とし一度に提供する食事量を減らして頻回食とします。2か月位を目途に1日3回食に移行 します。

(c)献立・調理のポイント

献立・調理のポイントを示しましょう。具体的なレシピや献立を配布するようにします。

食べ方(食べる順番、時間等)、温度、食後安静についても併せて指導 します。

具体的な順番や食事にかける時間、温度についても目安を示すと患者の安心感につながります。

(d)胃切除後症候群

切除部位や切除範囲によって症状が異なります。

主な症状としては 噴門部切除では食べ物の逆流によって起こる逆流性食道炎、幽門部切除では食べ物が小腸に一度に流出することによって起こるダンピング症候群 に注意が必要です。

逆流性食道炎は食後すぐ横にならないよう指導します。重度の場合は薬物療法で対応します。

ダンピング症候群については早期ダンピング、後期ダンピングの原因と対応法が異なりますので共に原理と対処法を明確に示します。

また、どのような症状が現れるかも説明しておきましょう。

また、その他の症状として便秘や下痢、術後貧血がみられる場合はそれぞれの病態の食事療法に準じて指導を行います。

その他

経口摂取量の減少や消化吸収能低下による体重減少がみられますが、体力の衰えとも併せて不安感が強い患者も多い為、栄養補助食品を紹介すると良いでしょう。

入院中に実際栄養補助食品を試食させ、退院後は口に合ったものを個人購入できるようにカタログやパンフレットを配布しましょう。

術後の食事摂取状況は非常に個人差があります。

同日に手術を行った同室の患者が順調に食形態がアップするにも関わらず、自分はアップできないというような場合不安感が強くなることもあるので、個人差が大きいということも忘れず伝えるようにします。

退院後

不安感から調理法や食材の選択の幅を広げることができず、バランスの悪い食事を摂取しているケースも多いことから、可能であれば退院後栄養指導を実施できるように退院前に予約をしておくと良いでしょう。

その際は食形態のアップについてや、食生活上の注意点や対策を栄養指導パンフレットに記載するようにしましょう。

個人差が大きいということは、個別ケアがとても大切になってきますね。

栄養士も十分に消化管の構造や病態を学び、個別での細やかな指導ができなくてはいけませんね。

大腸

術前

腸管狭窄というようなケース以外では、術前栄養治療、栄養指導が行われることは殆どありません。

腸管狭窄が見られる場合は腸管浮腫の軽減を必要もあり、 腸管が使用できない為高カロリー輸液を中心とした栄養補給が行われます。

それ以外のケースでは 原則として高エネルギー、高たんぱく質食 とします。

術後

以前は術後1週間近く絶食となっていましたが、近年では術後1~3日程度で食事が開始になる為、栄養指導は術後比較的早い段階で実施します。

流動食、もしくは三分粥食から始まり1日上がりで常食までアップします。

術前に腸管狭窄を伴う症例や縫合不全が発生した場合、通過障害がある場合は経口摂取開始時期を遅らせます。

また、開始時は成分栄養剤や半消化態栄養剤を用いて栄養療法を行うほうが安全と言えます。 患者にはその旨を栄養指導で説明します。

基本的食事療法

栄養

高エネルギー、高たんぱく質、高ビタミン食で脂肪は少量から試行し、5分粥程度から徐々に脂肪量をアップさせます。

全粥までは消化・吸収の良い食材、調理法とし、食物繊維の多い食品は控えます。

軟食、常食までアップできたら一般食を提供する施設も多いですが、 下痢が見られるような場合は食形態をダウンし、慎重にアップしましょう。

過剰な水分摂取も下痢を誘発するので控えるよう指導 します。適量を分かりやすく目安と共に示すと良いでしょう。

人工肛門造設の場合

下痢対策の栄養指導 が必要です。

食事時間や量、質を指導します。下痢しやすい食品(冷たい食品や食物繊維が多い食品、脂肪分が多い食品、乳製品等)を明示します。

ただし、個人差もあるので、本人からの聞き取りをもとに注意する食品を挙げておくのも良いでしょう。

また、 排ガス対策 として、ガスを発生させやすい食品(ビール、炭酸飲料、牛蒡、芋類等)も注意を促しましょう。

便臭対策 として、便臭を強くする食品(にら、にんにく、玉ねぎ、牛蒡、豆類、アスパラガス、海老やカニ、チーズ等発酵食品等)も絵図などと共に示しておくと良いでしょう。

その他

術後、下痢などが頻回で体重減少が大きい患者などは特に不安感が強いことが多いです。

また、今まで問題なく食べられていたものを食べて、下痢などの症状が見られるとより落ち込む為、場合によっては主治医と相談のうえ、本人の嗜好に添えるよう配慮します。

大腸切除後は小腸下部が代償的に役割を果たすことなど、 栄養士も解剖生理学的な説明が栄養学と共にできるようにしておくと、指導の際患者に安心感を与えることにもつながりスムーズです。

栄養士も幅広い知識が必要なのですね。

栄養士も栄養学のみ学べば良いのではなく、様々な分野の学びを深めることで栄養指導により幅が広がるのですよ。

終わりに

消化管切除術後の経過は、個人差が大きい ことを特徴とします。

また、術前後に不安感が強いこともしばしばみられます。食事をきちんと摂取し、早く良くなりたいと思いながらも思うように食事摂取ができなかったり、体重や体力の回復が見られない場合、焦燥感を感じる患者も多く見られます。

主治医と事前に情報交換、情報共有せず栄養士が教科書通りに栄養指導を行うと、医師の指導内容や説明と食い違い、患者の不安感をより強める結果になります。

消化管切除術後の栄養指導のみではなく、全ての疾患での栄養指導に共通することですが、 治療方針や指導を統一させる為にも事前情報収集、治療方針を確認し、十分な情報共有を行ってから栄養指導を行うことが大切 です。

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