公開日:2015年12月14日

CKD(慢性腎臓病)ステージ別個別栄養指導パンフレット作成方法や定義1

目次

はじめに

我が国の血液透析患者数は30万人を超え、現在も尚増加傾向です。

糖尿病性腎症、腎硬化症、慢性腎炎が原因となった慢性腎臓病(以下CKD)であり、CKD対策に力を入れていくことが新規透析患者減少に有意であると認識されています。

CKDは末期腎不全や心血管疾患(以下CVD)に進行する危険性が高く、早期発見と対策が必須です。

CKDステージ1~3では自覚症状は見られないことが多く、医療機関を受診されることも少ないのが現状です。

しかし、この時期こそ管理栄養士による栄養指導、栄養介入が効果的で進展防止に必須といえます。

ステージ4~5では、既に腎機能は3分の1以下に低下しており、進展防止は困難でありいかに現状維持できるかがポイントとなってきますので、やはり管理栄養士の支援は必要です。

CKDの栄養指導ではステージ、レベルに応じて食生活を支援していくことが求められており、管理栄養士の果たす役割は大きいと言えます。

CKD定義、重症度分類。

CKDに関わらず全ての栄養指導パンフレット作成において言えることですが、まず患者に自身の病態や状況を理解、把握させることが大切です。

導入が不十分な場合、指導でのコンプライアンス、アドヒアランスは不良となり、良い結果につなげることができません。

CKDの重症度分類 を載せておきましょう。

カラー印刷することをお勧めします。患者がどのステージ、どの程度のリスクを抱えているかを理解するのに役立つでしょう。

また、解剖学、検査項目の示す意味についても簡単に記載しておくことで食事療法の意義をスムーズに理解させることができるでしょう。

指導者もしっかり病態栄養学を学ばなくてはいけませんね。

指導者自身がしっかり理解していないと、患者に理解させ、行動変容を促すことは難しいのです。

生活習慣・栄養

腎臓病の食事療法は患者にとって決して簡単なものではありません。

CKD診療ガイドの生活習慣についての記載を箇条書きにするのも良いでしょう。

いきなりステージ毎の食事療法のパンフレットを用いた栄養指導を行うのではなく、腎臓病の基本食事療法として以下の項目を導入として説明し、その後ステージ毎、疾患毎の食事療法へ移行すると腎臓病の食事療法のイメージを持ってもらいやすいでしょう。

エネルギー
  • 性別、年齢、運動量から 27~39㎉/kg/日 が推奨されます。肥満の是正が必要な場合は 25㎉/kg/日 を目安とすることもあります。
治療用特殊食品
  • 治療用特殊食品を使用すると、食事内容に幅をもたせることができることを伝えます。
    ただし、治療用特殊食品が腎機能を改善させる為の食品ではないことも十分伝える必要があります。

指導を行う場合はカタログとサンプル、レシピを配布しましょう。

治療用特殊食品を使用する頃には食欲が落ちていることも考えられます。取り寄せをしても食べられないことがあるので、必ずサンプルを試して、本人が納得したうえで購入するよう勧めます。

また、治療用特殊食品は決して安価とは言えず経済的負担も大きいことから無理強いはしません。その場合、既製品でそれに近い商品を紹介できるようにすることも大切です。

たんぱく質
  • ステージが進行すると制限が必要となることを説明しておきましょう。制限が不要なうちに患者の判断で制限を行わないよう、具体的な1日の摂取目安量を具体的に示しておきましょう。

腎臓の働きについて三大栄養素と合わせて行い、たんぱく質制限が必要となる理由を絵図など用いて説明するとイメージしやすいでしょう。

アミノ酸スコアの高い食品摂取を促すので、 アミノ酸スコアの一覧表 を添付しておくことも良いでしょう。

制限が必要な患者へは 「腎臓病食品交換表」 を利用し説明できるようにしましょう。

たんぱく質調整食品の指導を行う場合は、レシピを配布し 美味しく食べられる工夫 についての指導を行いましょう。

アルコール
  • エタノール10~20g/日程度 はGFRを維持し、蛋白尿を減少させる可能性があり、エタノール20~30g/日以上は蛋白尿を発症させる可能性があるとし、推奨しません。

アルコールの種類とエタノール換算した一覧表を絵図などで掲示しましょう。

水分量
  • 過剰摂取、極端な制限は有害となることを説明します。
    水分が少ない料理や水分摂取を減らせる工夫を指導できるようにしましょう。
塩分
  • CVDリスク抑制及び腎機能障害進行抑制の為基本は 6g未満 とします。ただし、減らせばよいというものではなく、腎障害悪化の可能性もある為 3g/日未満への制限は行いません。

「無塩」に近い食事を行っている患者や、高齢者で食事量が極端に少ない場合は3g未満/日ということもみられるので、聞き取りでは十分注意が必要です。

減塩食の工夫やレシピを配布しましょう。

減塩食品を紹介する場合、塩化カリウムを使用したものもあるので、高カリウム血症の患者には注意が必要です。必ず確認しておきましょう。

また、減塩を行うことで水分制限につながることも説明します。

調理技術が不十分な一人暮らしの男性や高齢者など、惣菜や既製品などを利用することが多い患者には市販食品ラベルは「食塩」でなく「ナトリウム」表示されている場合があるので、食塩換算についても触れておくと良いでしょう。

ミネラル
  • CKDが進行すると高カリウム血症、高リン血症、腎性貧血、低カルシウム血症が出現します。その可能性があることと併せて簡単に説明できるようにしましょう。

カリウム

血清カリウム値を4.0~5.4mEq/lで管理 します。低ければ良いというものでなく、 4mEq/l以下では死亡リスクが高くなるので注意が必要 です。

カリウム制限が必要な患者にはカリウムを多く含む食品の一覧を配布しますが、調理法についての説明も必要になります。

また、血清カリウム値が適正なうちからカリウム制限を行うことがないようにします。

患者の中にはスイカやメロンなどカリウムを控えたほうが良いという思い込みなどで、不必要なカリウム制限を行っているケースもあることから、野菜や果物などカリウムを含む食品を積極摂取することで腎機能が保護されることなどカリウムや食物繊維の働きについてもきちんと指導します。

カリウム制限が腎機能悪化の予防につながる訳ではない旨も説明しましょう。

リン

ステージに関わらず 血清リン値を2.5~4.5㎎/dl で管理します。

制限が必要でない患者にリンの説明まで行うと不安感を強めることもある為、腎機能悪化が見られる場合に制限が必要となることを説明しておきましょう。

リン制限が必要な患者にはリンを多く含む食品の一覧を配布します。加工品の保存料にはリンが多く使用されているのでその説明も必要です。

腎臓で産生される 造血因子のエリスロポエチン についての説明を簡単に行います。

鉄の摂取が少ない場合は鉄を多く含む食品の摂取を促しますが、たんぱく質制限がある場合にはそれを留意した食品選びと指導が必要となります。

また、 ビタミンCやタンニンと鉄の吸収 についての指導も行います。

カルシウム

カルシウム吸収を阻害する食品 についてまとめておきましょう。

患者さん一人一人の病態、症状、思いも様々且つ複雑なので、見極めたうえで 個々に合った栄養指導 をしていかなくてはいけませんね。

指導者がしっかり病態を学ぶことは当然ですが、コミュニケーションスキルも身につけ、患者が納得できる栄養指導を行わないといけませんね。 栄養指導ではコンプライアンスよりアドヒアランスを高められないといけません。

食事療法基準

食事療法基準 を載せ、患者のステージとそれに準じた食事療法の一覧を示すことで自身の食事療法の方針を理解させやすくなります。栄養指導パンフレットを配布する際に、患者のステージをマーキングしておくと良いでしょう。

ステージ1
  • ①エネルギー
    • 27~39kcal/kg/日
    • 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」と同一とします。
    • ②たんぱく質
    • 0.8~1.0g/kg/日
    • ③塩分
    • 10g未満 ただし高血圧を併発している場合は6g未満。
ステージ2
  • ①エネルギー
    • 27~39kcal/kg/日
    • 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」と同一とします。
    • ②たんぱく質
    • 0.8~1.0g/kg/日
    • ③食塩
    • 10g未満 ただし高血圧を併発している場合は6g未満。
ステージ3
  • ①エネルギー
    • 27~39kcal/kg/日
    • 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」と同一とします。
    • ②たんぱく質
    • 尿蛋白量で0.5g/日未満で0.8~1.0g/kg/日、尿蛋白量0.5g/日以上での場合は0.6~0.8g/kg/日
    • ③塩分
    • 3g以上6g未満。
    • ④カリウム
    • 2000㎎/日以下
    • カリウムを多く含む食品一覧を添付しましょう。
ステージ4
  • ①エネルギー
    • 27~39kcal/kg/日
    • 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」と同一とします。
    • ②たんぱく質
    • 0.6~0.8g/kg/日
    • ③塩分
    • 3g以上6g未満。
    • ④カリウム
    • 1500㎎/日以下
    • カリウムを多く含む食品一覧を添付しましょう。
ステージ5
  • ①エネルギー
    • 27~39kcal/kg/日
    • 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」と同一とします。
    • この時期は低たんぱく質食によるエネルギー不足や、尿毒症、食欲不振によるエネルギー不足のこともあるので、治療用特殊食品などの紹介も行います。
    • ②たんぱく質
    • 0.6~0.8g/kg/日
    • 血液透析
    • 1.0~1.2g/kg/日
    • 腹膜透析
    • 1.1~1.3g/kg/日
    • ③塩分
    • 3g/日以上6g/日未満
    • 血液透析
    • 6g/日未満
    • 腹膜透析
    • 尿量(l)×5+PD除水(l)×7.5
    • ④カリウム
    • 1500㎎/日以下
    • 血液透析
    • 2000㎎/日以下
    • カリウムを多く含む食品一覧を添付しましょう。
    • 腹膜透析
    • 制限なし。ただし、高カリウム血症がみられる場合は血液透析同様の制限を行います。
    • ⑤リン
    • たんぱく質(g)×15㎎/日以下
    • リンを多く含む食品一覧を添付しましょう。
    • 以前はリン制限=たんぱく質制限という指導が主流でしたが、極端なたんぱく質制限による生命予後リスクは否定できない為、現在はナッツや小魚等リン/たんぱく質比の高い食品や練り製品、加工品に着目して指導します。
    • 一人暮らしで調理技術がない患者は惣菜や加工品の利用が多くなりがちです。指導の際は、簡単に調理できるレシピや腎臓病食の配食サービスなどの紹介も行えるようレシピやカタログを準備しましょう。
    • ⑥水分
    • 透析
    • (15ml×kgDW/日以下)
      尿量+除水量
    • 水分制限を行う為にも減塩食が重要である旨を伝えます。

対象者のステージ毎、患者個々の環境、年齢、思いや受け入れ状況もそれぞれだし、行動変容につながるような指導をするには 患者状況把握が重要 になってきますね。

患者教育では 「情報提供」「意志決定の促し」「強化」 を支援しなくてはいけません。患者を望ましい食生活習慣に行動変容させるためには、病期ステージ毎の食事指導を徹底することは勿論ですが、それ以上に 行動変容ステージの見極め を行い、患者を理解したうえでの支援が大切なのですよ。

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