食中毒が起こった時の対応と対処のポイント1
目次
はじめに
食中毒が起こった時の対応は食中毒がどの時期に多く発生し、原因食品がどのようなものであるかを理解しておくことが重要です。
病院や施設で働く栄養士や管理栄養士
が対象としているのは、健常な人ではなく、病を患い免疫力が低下している人といえます。
そのことを念頭に入れ、扱いに注意が必要な食品などは知っておいてください。
食中毒は病院や施設での食中毒発生はあってはならないことですが、実際に毎年多くの病院や施設、学校で起きています。
本来、病院や施設における食事は、医療サービス、介護サービスの一環として重要な役割を果たしています。
安全であることは最低条件として当然ですが、万が一にそなえ、病院食や給食が原因となり食中毒が発生した場合には、速やかに、その 原因を追及する とともに、入院している 患者の食事の確保すること が最優先といえます。
食中毒とは。
飲食物の摂取に起因する健康障害 と定義されています。
おもに、食品や水などを摂取することによって病原体やそれが産生する毒素、有害で有毒な物質がヒトの腸管内で中毒症状を起こす場合をさします。
食べることは、わたしたちの日常生活において、生命を維持し、発育や成長、健康維持のために必要不可欠です。
そのため、食べものや飲みものは、いつも清潔で安全に保たれていることが重要ですが、毎年多くの食中毒や感染症が報告されているのが現状です。
食中毒発生時:管理栄養士および調理場での対応。
各病院で規定されている、院内感染防止対策マニュアル、食中毒発生時対応マニュアルにそって実施します。
その際、院内感染防止対策委員会などの指示に従うことが多くなっています。
連絡体制
患者に食中毒が発生したと判断された場合、委員会から栄養管理部部長および栄養管理部へ連絡が入ります。
連絡を受けた栄養管理部部長は、給食委託会社に食中毒発生の連絡をします。(給食管理を業務委託している場合)
栄養管理部のおもな役割。
調理従業員、栄養士の症状を確認します。
保健所の立ち入り調査の対応ができるよう準備をします。
引き続き食事サービスが必要な患者に対して、食事の確保をします。
食中毒発生に関連して、感染防止対策委員会などが開催される場合には、栄養管理部長、栄養管理部代表が参加し、進捗を報告します。
調理場での対応。
保存食を確認します。
保存食は 食中毒発生前の2週間分 を提出します。食材料および調理済み食品は、食品の種類別にそれぞれ 50g程度 、清潔な容器や袋に密閉して入れ、 -20℃以下で2週間以上保存 しておくのがルールです。保存にあたって、注意する点は以下のとおりです。
- 原材料の野菜などで生産地が異なる場合は、生産地ごとに採取する。
- 一定期間分を一括購入している食材は、納入時に採取する。
- 調理済み食品は使用している食材がすべて含まれるように、釜別、調理工程別に50gずつ採取する。
- 容器に採取年月日、食品名、料理名などを必ず記入する。
- 保存した冷凍庫の温度も記録する。
引用元: 野菜の冷凍保存の仕方
患者の嘔吐物などがあれば保管します。
嘔吐物を処理するときは、使い捨てのエプロン、マスクと手袋を着用 以下の流れで処理します。
- 汚染中の細菌やウィルスが飛び散らないようにペーパータオル等で静かに拭き取る。
- 採取した後は、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm)で浸すように拭いて、その後水拭きをする。
- 拭き取りに使用したペーパータオル等はビニール袋に入れ密封する。
- 嘔吐物が乾燥すると空気中に漂いやすくなるため、乾燥しないうちに処理をする。
食中毒発生 2週間前からの献立表 の複写を用意します。
保存食に合わせて、献立表を提出します。
これはウィルスを含む細菌の潜伏期間を考慮した日数とされており、腸管出血性大腸菌O-157の潜伏期間である3~9日を考慮した数値となっています。
献立に基づく料理別の料理作業内容、供食までの経時過程を一覧表にします。
調理法や供食法、調理加熱を開始した時刻や終了した時刻、冷蔵庫に保管した時刻など各作業の開始時刻を終了時刻の記録、また、供食時刻も提出します。
さらに、調理時の
温度管理や保管時の温度管理
についても調査を受けます。
食品材料の入手経路、購入先、保管の状況の記録を用意します。
入手経路 のほか、いつ、どこで、だれが 検収 を行い、どのように保管していたかの状況がわかる記録を提出します。
患者名簿を作成します。
院患者に症状がみられた場合には、その患者の 食事形態 とその食事の 摂取量 についても記録したものを提出します。
調理場の見取り図、および給食従事事務員の健康管理に関する記録を用意します。
食品の流れを把握する、また、調理場の構造上、汚染の危険がないかを確認するために提出します。また、 調理に従事する者の健康診断の結果や勤務時間表、検便結果 を提出します。
表1:食中毒事例の概要
引用元:LASR
食中毒発生時:保健所、厚生労働省の対応。
食中毒が発生した場合、「食品衛生法」(昭和22年12月24日法律第233号)の規定により、 医師からの届出、保健所長による調査、都道府県知事等および厚生労働大臣への報告が義務付け られています。具体的には、以下について規定されています。
- 食品、添加物、器具若しくは容器包装に起因して中毒した患者もしくはその疑いのある者(以下「食中毒患者等」という)を診断し、又はその死体を検案した医師は、直ちに最寄りの保健所長にその旨を届け出なければならない。(法第58条第1項)
- 保健所長は、医師からの届出を受けた時や食中毒患者等が発生していると認める時は、速やかに都道府県知事等に報告するとともに、原因食品や病因物質の追求必要な疫学的調査や患者等の血液、ふん便など又は原因と思われる食品などの微生物もしくは理化学試験など政令に定めるところにより、調査しなければならない。(法第58条第2項)
- 都道府県知事等は、保健所長から2)の報告を受けた場合であって、食中毒患者等が50人以上発生し、又は発生するおそれがあると認める時やその他厚生労働省令で定める時(以下【都道府県知事等から厚生労働大臣に直ちに報告しなければならない場合】参照)は、直ちに厚生労働大臣に報告しなければならない。(法第58条第3項)
- 保健所長は、2)の調査を行った時は、患者等の所在地、医師からの届出年月日、患者数や症状、原因食品等、病因物質、原因施設など政令に定める事項について、都道府県知事等に報告しなければならない。(法第58条第4項)
- 都道府県知事等は、4)の報告を受けた時は、食中毒事件票および食中毒詳報など政令に定めるところにより、厚生労働大臣に報告しなければならない。(法第58条第5項)
- 調査しなければならない。
都道府県知事等から厚生労働大臣に直ちに報告しなければならない場合。
都道府県知事等から厚生労働大臣に直ちに報告は以下7点です。
- 患者数が50人を超えて発生、又は発生するおそれがあるとき。
- 当該中毒により死者が発生した場合。
- 輸入食品等に起因し、または起因すると疑われる場合。
- 次に掲げる病因物質に起因し、または起因すると疑われる場合。
- サルモネラ
- エンテリティディス
- ボツリヌス菌
- 腸管出血性大腸菌
- エルシニア