公開日:2016年9月20日

個別栄養指導で押さえておくべきコミュニケーションのポイント

はじめに

ここでは個別栄養指導で押さえておくべきコミュニケーションのポイントを解説していきます。

目次

ーこれらを解説していきます。

始めに個別栄養指導で押さえておくべきコミュニケーションのポイント。

栄養指導は、一度きりで終わらせることなく継続的に実施することが大切です。

自分が指導した内容で患者にー

  • 行動変容が見られたのか。
  • 計画に無理はなかったか。
  • 継続可能であるか。
  • そして結果につながっているか。

ーということを確認します。

複数回患者に会い、少しずつコミュニケーションを取ることが重要です。一度でコミュニケーションを取ることは難しく、少しずつラポール(信頼関係)を形成していくことが基本です。

また、栄養食事指導は「ひと」が対象であり、コミュニケーションマニュアルはあくまで参考までとし、患者から学び、感じ取ることが大切です。

コミュニケーションスキルは患者一人一人と向き合い、そういったやり取りを行うなかで身についてくるものです。

栄養性疾患

肥満

肥満とひとことで言っても成因は様々であるので、それに合わせた指導を行わなくては単なる体重減少を目的としたエネルギー制限指導になってしまい、受け入れられにくいことは言うまでもありません。

例えば仕事で夕食が遅くなってしまう場合や、調理のできない一人暮らし男性が外食に偏ってしまうことによる肥満であれば、生活指導や調理指導を行う必要があります。

他の疾患が存在する二次性肥満の場合、エネルギー制限よりその疾患にフォーカスした指導を行う必要があります。

精神疾患等が起因となった食欲増加による肥満であれば、メンタルフォローは必須ですし、必要に応じて薬物療法併用となります。

つまり、患者の成因を見極めそれに添った指導を行わなくては的外れの指導になり、指導の成果を出すことができませんし、患者の動機づけは不十分になってしまいます。

肥満患者は精神的に弱いケースも多く見られるので、成因を見極める為にも傾聴に時間をかけた指導が必要です。

るい痩

ダイエットや嚥下障害といった外因性のものと、甲状腺機能亢進症、消化器系疾患による栄養吸収障害などの内因性のものとあります。

疾患が明確なものは疾患治療を行うので、栄養士が介入する原因疾患がないケースでは、基本は食事でエネルギー量を増やし体重増加を図るよう指導を行います。

しかし経口摂取に限界がある場合は経腸栄養、経静脈栄養での栄養補給の提案を行うなどし、決して無理強いしないことが大切です。

また、単にエネルギー量を増やす為の食事の提案ではなく、本人が食べたい料理や嗜好性を優先します。るい痩患者はストレス等気持ちの揺れは食欲と強く相関するので、 食べることが楽しいと感じられるようなリラックスできる指導を行う必要があります。結果を焦らないことです。

肝臓・胆嚢・膵臓疾患

急性期、劇症、慢性期、術後、回復期では身体症状も異なる為、患者の身体状態に考慮しながら指導を行います。

指導の最中に倦怠感の訴えがある場合や、気分が乗らない様子が見受けられる場合もしばしばありますが、その場合は指導の途中でも切り上げるなどの配慮は必要です。

入院栄養指導では栄養指導日に患者の体調がすぐれない場合は無理せず日にちを変更する配慮など、患者の症状に合わせた柔軟な対応をしなくてはなりません。

循環器疾患

減塩指導が基本となります。しかし継続して初めて効果が少しずつ現れるものなので、長期戦となります。

急激な減塩食への切り替えは患者の食生活や食習慣など生活環境を無視することとなり、食事療法の継続や実行が困難となり結果に結びつきにくいです。

減塩食品や特殊食品を利用することから始めるなど、実現可能そうなものから開始する必要があります。

ただし、減塩効果の見られにくい食塩非感受性高血圧(NSSHT)の場合は、食事療法より薬物療法へ切り替える提案も行います。結果がついてこない指導に対して患者は不信感を抱きます。

また、肥満を合併しているケースや喫煙者に対しては食事療法のみで効果が出ない場合、運動療法や生活指導も併せて行います。

長期戦になる疾患に対しては飽きがこないようめりはりをつけることが効果的です。

腎臓・泌尿器疾患

減塩指導については循環器疾患と同様の指導です。

急性期、回復期、慢性期によってエネルギー量、たんぱく質量、塩分量等大きく異なりますし、カリウムやリン、水分など病期によって制限があるものとないものがあるので、患者が混乱しないよう病期毎に栄養指導にめりはりをつけることが大切です。

特に糖尿病から糖尿病腎症へ移行した場合、 今まで控えるよう言われた糖質や油分を増やす指導に対して混乱するばかりか、不信感を持ち、頑なに今までの食事療法のスタイルを変えない患者も少なくありません。

栄養士が複数名存在する施設では、指導担当者を変えることも患者の混乱防止になります。

消化管疾患・術前術後

十二指腸潰瘍、イレウス(腸閉塞)など痛みや症状がある場合食事療法に対しての受け入れは良好ですが、食道静脈瘤や肝硬変等無症状、もしくは全身状態が安定している場合、予防のための食事療法に対しては動機づけが不十分になるケースも時としてみられます。

怖がらせすぎるのはよくありませんが、必要に応じて食道静脈瘤破裂が致命的となることなど、怖さも十分に説明しなくてはいけません。

動機づけが難しい疾患では、多職種協働でアプローチすることで理解を示されることも多々あります。

術前・術後の栄養食事指導では食事療法の受け入れは十分なことが多い為、明確に適食品、不適食品を明示してあげると不安を取り除くことができます。

術前は患者の不安感が強いので、複数回病室訪問を行い、声かけを行うと共に術前の栄養状態が悪いと術後感染症や治癒遅延等のリスクを説明することで食事療法の重要性や遵守の動機づけにつながります。

術後の経過が芳しくない場合や食欲がない場合、個別での食事対応は患者にとって安心感と心強さにつながります。移行食を提供するので食形態が変わる都度病室訪問をすることで患者との距離は縮まりやすいでしょう。

代謝性疾患

糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、痛風など生活習慣病と言われる代謝性疾患は遺伝因子、自己免疫異常等やそれに加え永年の食生活、食習慣が成因となることが多いです。傾聴し、永年の生活習慣を尊重しつつ、具体的なアドバイスを行わなくてはなりません。

加えて自覚症状を伴わないことも多いため動機づけが困難です。

疾患の機序、成因、食事療法の根拠を明確に指導しなくては行動変容につながりにくい疾患です。

栄養指導はPLAN、DO、SEE(計画→実行→評価)のサイクルで繰り返し行うことが重要です。根治治療ではなく、コントロールしていく疾患ですのでいわば永久的に食事療法を継続する必要があります。

いかに飽きずに無理なく実行できるような指導を行えるかが重要ポイントになります。

また、「○○はいけません」という否定的な言い方ではなく「○○より△△のほうがいいですよ」など具体的な提案を挙げるようにします。

献立も患者の食習慣に合わせて個別で作成するなど(病院の週間献立をそのまま配布するのではなく、患者が朝はパン食、昼は麺という食パターンであればそれに添った献立を別で作成します)、細やかな関わりを持つことでラポールを形成しやすくなります。

代謝性疾患は「指導」ではなく「支援」のスタイルで添うことが大切です。

血液疾患

貧血

貧血の種類によって食事療法が異なりますが、患者は貧血と言うと鉄欠乏性貧血のイメージが大きく、鉄分の補給のみに執着することがあるので、疾患の概要や成因、治療法を十分に説明する必要があります。

貧血は重度でない場合、自覚症状が少ない為動機づけが難しいですが、進展した場合の有害事項をきちんと説明するなどして理解を十分に促します。

極端なダイエットが原因となった貧血の場合、るい痩の栄養指導法に準じてメンタルフォローも行いながら支援します。

白血病・骨髄移植

癌細胞の増殖により多量のエネルギーやたんぱく質が必要になりますが、化学療法後や移植後は粘膜障害を発生しやすい為、エネルギーやたんぱく質量の確保も大切ですが、刺激の少ない消化の良い食事にするなどの考慮も必要です。

また、薬剤副作用により食欲減退になることもあるので、本人が食べたいものや食べやすいものをしっかり聞き取り、症状に対応した食事の工夫を行います。

味覚異常を起こし、日によって嗜好が変わることも多々ありますが、日替わりの申し出や食事変更にも可能な限り柔軟に対応し、要望や気持ちに添えるよう配慮します。

栄養士が直接病室に配膳し、食事に付き添う(無菌食は除く)といったことも作った人の顔が見えることで喫食率アップにつながることもあります。

骨疾患

骨粗しょう症と言えばカルシウム=乳製品という一般のイメージが強く、乳製品の過剰摂取による脂質異常症の併発という症例も少なくありません。

必要以上に乳製品を摂取しないよう適量を明示することが大切ですが、乳製品を積極摂取しているような患者は健康意識が高く、治療熱心であるが故の行動であることが多いです。

全否定するのではなく患者の行動をしっかり褒め、認めつつ他のカルシウムを多く含む食品を提案し、運動療法や生活指導も組み込みつつ是正します。

妊産婦・乳幼児・小児・高齢者

妊産婦

妊娠週により、つわりで食欲減退がみられるので無理強いせず、食べたいものを食べられるだけ食べるように指導します。

妊婦は胎児に栄養が十分供給できないのではないかと不安感が強く、精神的に落ち込みやすい為、この時期多少食事摂取量が落ちても胎児への影響は少ないことを説明し安心感を与えるようにします。

ただし、妊娠中毒症の場合は早産、脳出血、胎盤早期剥離などの危険性があることを伝え、早急な厳格なコントロールが必要であることをきちんと伝える必要はあります。

乳幼児・小児

両親に対しての指導になると思われますが、乳幼児・小児に疾患がある場合、特に母親は自責の念が強いことが多い為、追い詰めないような指導や、 若い母親で料理に自信がない場合は、簡単な料理や半調理品の紹介を行うなど不安を取り除くことが大切です。

母子家庭の母親によく見られますが、不安や心配が強そうな場合、いつでも栄養士に連絡できることを伝えるなどして、安心感を与えることと、母親としての責任を放棄しないような見守りが必要です。

そういう関わりをすることで栄養士を心強い存在として受け入れてもらえるようになります。

高齢者

加齢とともに理解力が低下するので、一度に沢山の計画を提示せず一回の指導では一提案に留めるようにし、紙に大きな文字で指導内容を書き込むなどの対応が必要です。

独居高齢者の場合、宅配サービスの利用を勧めるケースもありますが、カタログからの通信販売などは難しいことが多いので、なるべく簡単な方法を勧めます。ヘルパーへの指導も適宜行います。

嚥下状態の低下も見られることが多いので、指導の都度むせや咀嚼の確認も行います。 根気強く、簡単で分かりやすい指導を繰り返さなくては行動変容は期待できません。

人生の先輩として患者の人生を尊重することも大切です。

その他

その地域に密着した指導を行うことが大切です。

例えば就職先が地元ではない場合、方言などで患者と距離が開いてしまうことがあります。なるべく地元の言葉を使うようにし、献立でも地元の食材を取り入れるようにすることで距離が縮まりやすくなります。

また、生活保護の患者の場合、金銭的な問題を考慮した指導は必須です。

終わりに

以上のようにすべての疾患に言えることですが、栄養食事指導というのは 9割傾聴、1割助言というスタイルが大切です。 患者の生活環境、背景に添った指導を行うことで栄養士が身近な存在になります。

患者の話に耳を傾け、患者を理解したうえで気持ちに添うことが大切です。

また、エビデンス(科学的根拠)をもった指導を行わなくては食事療法を行う意義を患者は理解できず、行動変容を期待できません。

気持ちに寄り添ったうえで、専門家としての知識を患者一人一人に見合った形で伝授することが栄養指導の基本です。ラポールの形成こそが栄養指導に於けるコミュニケーションの極意と言えます。

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