集団栄養食事指導のポイント。個別栄養食事指導との違い
目次
集団栄養指導をおこなう前に。
集団栄養食事指導の目的の第一は、その疾患の基本的な知識や食事療法などを多人数に伝えることです。
管理栄養士 が個人や集団を対象として集団栄養指導・教育を実施することで、知識の理解や習得だけではなく、より良い食行動や食習慣への行動変容を導きだせる力が求められています。
しかし、個人あるいは集団に集団栄養指導をおこなうとき、それぞれに対して集団栄養食事指導は一律な栄養食事指導の側面が大きいです。
それは対象者のライフステージによって、身体的・精神的状況が大きく異なっていることが影響します。
さらに、食行動は、経験や社会的・経済的な影響を受けて獲得されるものであり、単なる知識教育をおこなうだけでは、対象者の食行動の変容には至らないことが多いです。
対象者に合わせた集団栄養指導を!
対象者が個人の場合、ライフスタイルや特性、社会的環境などに配慮しながら、その行動に至るまでの意識や感情についても行動の一部として把握することが大切です。
一方、集団に対する指導を実施する場合は、 個人から得られた栄養アセスメントの情報を集団の情報として集約し、そのデータをもとに集団の特性や問題を抽出する作業が必要となります。
栄養指導の実践・ポイント。
集団指導において重要なことは、対象者が食に関わる生活習慣における課題に自ら気づき、健康的な行動変容の方向を自ら導きだせるよう支援することこそが、私たち管理栄養士の役割です。
そして、新たな行動の習慣から健康的な生活の維持につなげることがその先にある目的といえます。
集団指導は個人指導の効果を上げるため指導方法であり、 常に集団のなかの個人を念頭に置いておく必要があります。
対象者が健康に対する重要性を認識し、食行動の現状を改善しようと意欲的になり、態度と行動が望ましい方向へ習慣化するまで繰り返し実施すること、そして次々とステップを上げていくことが指導に関わった管理栄養士の成果といえます。
集団指導をおこなう管理栄養士に期待される能力は以下の4項目です。
- 指導内容の企画・立案・評価ができる能力。
- アセスメント・計画案作成から実施・評価まで。
- 行動変容につながる指導ができる能力。
- 検査結果から背景を読み取り、行動変容、日常生活からアセスメントができる能力、グループワーク、継続的フォローアップする力など。
- 集団栄養食事指導に関して指導ができる能力。
- カウンセリング・アセスメント・コーチング・ティーチングなどの技術、自己効力感を高める技術、グループワークを支援する技術。
- 適切な学習教材を選定、開発できる能力。
- 講義、シミュレーション能力、教材作成能力。
栄養指導の流れ。
指導対象者の実態把握
対象者をとりまく環境・要因がどのような状況にあるかを知り、背景には何が存在するかを明らかにすることが栄養食事指導を効果的におこなうために必要です。それには、 事前に調査を行い、現状を分析しておく作業が必要となります。
指導の計画(Plan)
指導対象者の実態把握によって問題点を明確にし、栄養食事指導の目標を設定します。重要性や緊急性のあるものから順位をつけていき、具体的な指導計画を立案します。
- 目標設定の手順
《大目標設定のコツ》
- 問題点の重要性を考える。
- 問題解決において難易度を考える。
- 時間的な緊急性を考える。
《中目標設定のコツ》
- 容易に実行でき、目標が達成できたと満足感が得られるものである。
- 達成の過程が具体的に評価できるものである。
- 次の目標達成のステップになるものである。
指導の実施(Do)
指導方法の基本的な考え方は、6W1Hです。
Why:なぜ?
指導する根拠はなにか。
Who:だれが。
指導者はだれか。
Whom:だれに。
対象者はだれか、対象者の具体的な背景など。
What:なにを。
目標に合わせて焦点を明確に。
When:いつ。
指導をいつ実施するか。
Where:どこで。
指導をおこなう場所はどこか。
How:どのように。
方法はなにを用いるか、指導媒体などの準備。
指導の評価(Check)
指導方法や対象者に好ましい改善がみられたか、効果が上がったかなどを客観的に知ることが必要です。
指導評価の判定(Action)
4)の指導の評価と同時に行われることが多く、一度評価した内容について次のステップに進めることが可能か、もう一度同様の指導を繰り返したほうが良いかを決めることです。病院では、医師による確認が必要になる場合もあります。
管理栄養士としての心構え:職業人としてのマナー
指導をおこなう管理栄養士として、自分自身が高度の専門知識や技術を身につけることが必要ですが、指導は人と人とのふれあいから始まるといえます。
人はそれぞれ異なる考えかたや価値観を持っているので、さまざまな人に対して自然な気持ちで話を受け入れてもらい、信頼される人間性、人格を磨いておくことが基本となります。
人とうまくコミュニケーションがとれるような職業人になるには、次のようなマナーを身につけておくことも大切です。
- 指導時の服装:白衣(白衣の下の着用する服にも注意を払う)など。
- 化粧、髪型。
- 挨拶:出勤時、退出時、廊下ですれちがったとき、対象者に声をかけるときなど。
- 身のこなし:お辞儀の仕方、歩きかた。
- 言葉づかい:敬語の使いかたや丁寧に伝える。
- 手紙、ビジネス文書の書きかた:案内状、問い合わせなど。