公開日:2016年9月9日

2型糖尿病用 パンフレットの作り方個別栄養指導

始めに 個別栄養指導のパンフレット2型糖尿病用。

個別栄養指導のパンフレット(以下パンフレット)を作成するにあたり、疾患の特徴、対象者を把握してから作成するようにします。

対象者の把握というのは、疾患のタイプ、年齢、性別、生活環境等になりますが、事前に対象者を特定することが困難な場合は、ケースを想定していくつかパンフレットを作成しておくとよいでしょう。

その中から対象者に見合ったパンフレットを使用して指導すれば、通り一遍等の栄養指導にならず、個別化した指導を行うことができます。

例えばー

  • 糖尿病の場合1型糖尿病。
  • 2型糖尿病、特定の機序。
  • 疾患に伴うその他の糖尿病。
  • 妊娠糖尿病。

ーの4つの病型に分類されます。

どの病型も基本的な糖尿病食事療法は同じになりますが、タイプによって考慮、配慮する必要があります。

年齢、性別、生活環境の把握というのはー

高齢で糖尿病の食品交換表の理解が難しいと思われる症例。

若年であるが単身赴任で調理が一切できない症例。

仕事のシフトが不規則な1型糖尿病の対象者の年齢、性別、背景を把握することで指導媒体も検討できるからです。

対象者の実情に添ったパンフレットを作成することが大切です。

糖尿病用パンフレット作成の流れ。

パンフレットを作成するにあたり、唐突に食事療法についての方法論から入るのではなく、糖尿病の疾患の概念について簡単に触れる必要があります。

病院等で糖尿病教育入院をされる場合、疾患の概念、診断、検査については医師など主治医が説明するので、栄養士が深く触れる必要はありません。

しかし、患者が疾患の概念を理解できなければ、なぜ食事療法が必要なのかということを納得し、受け入れてもらうことが難しくなります。疾患について食との関連が深い箇所については栄養士が説明しておく必要があります。

疾患の概念では,胃での消化、膵臓のβ細胞からのインスリン分泌、肝臓でのグリコーゲン貯蔵、筋肉での糖の取り込み、腸での吸収の原理は説明し、それから治療総論に入ります。

シェーマ(身体部位の絵図のこと)などをパンフレットに載せておくのもひとつです。

糖尿病の基本治療となる食事療法、運動療法、薬物療法についての説明を行ったうえで、基本となる治療法が食事療法であるという流れからの導入がスムーズです。

食事療法の項目

目的

糖尿病療養指導ガイドブック(メディカルレビュー社)に挙げられている目的2項目に触れます。食事療法を行う目的をまず明確にしておく必要があります。

糖尿病患者が健常者と同様の生活を送ることができるよう必要栄養素を摂取すること。

代謝異常を是正し、血糖、血中脂質、血圧なの検査データのコントロールを良好に

し、合併症を予防すること。

意義

適正エネルギー量、栄養バランス、規則的な食習慣についての説明を行います。

この項目で厚生労働省、農林水産省、文部科学省で共同作成された「食生活指針」の10項目に沿って基本的なバランスの良い食事について触れておくと良いでしょう。

適正なエネルギー摂取量について。

適正なエネルギー摂取量(指示エネルギー)の決定の仕方。

性別、年齢、身長、身体活動量、合併症の有無を考慮して決定すること、エネルギー摂取量の算出法(成人の場合エネルギー摂取量=身体活動量×標準体重)について、身体活動量の目安(軽労作、普通の労作、重い労作の標準体重あたりのエネルギー)について説明します。

患者のBMIや標準体重、身体活動量を書き込めるようにしておくと、エネルギー摂取量の算出根拠を示すことができるうえに、患者に自分のエネルギー摂取量を把握させることができるのでお勧めです。

栄養素の配分。

バランスのとれた栄養素配分の必要性について触れます。

最初に糖尿病の疾患概念について説明したことがここで生きてきます。

血糖値の上昇速度をゆるやかにする為に、栄養バランスのとれた食事がいかに効果的且つ重要であるかということを理解していただきます。

三大栄養素の血糖の上昇速度についての表を載せておくと分かりやすいと思います。

三大栄養素の比率。

穀類エネルギー比は50~60%以内にし、たんぱく質は標準体重1㎏あたり1.0~1.2gとし、それ以外を脂質で摂取することの説明を、お弁当などを例に出し、主食半分、おかずが2品、といったように説明するとイメージを持ってもらいやすくなるので、絵図を載せておくことも良いでしょう。

ビタミン・ミネラル、食物繊維。

厚生労働省策定の 「日本人の食事摂取基準2015」 に沿います。

食物繊維を1日20~25g以上摂取することと、血中脂質との関係についての説明をします。

食物繊維は食後血糖値の改善に有効であることと、血中脂質を低下させること、満足度を向上させる目的があります。野菜1日350g以上の摂取目標とすることで必要な食物繊維が摂取できるということと、どの程度が350gになるか(生の状態で両手いっぱい100g等)目安を明示します。

食塩量

長期に渡って高血糖が持続した結果、糖尿病特有の最小血管障害と大血管障害や慢性合併症を発症しやすくなります。こういった危険因子は重複して存在し、インスリン抵抗性が起因していると言われています。

動脈硬化、心血管イベントの発症を防ぐ為に食塩と血圧上昇及び血管障害との関係についての説明を行います。合併症予防の為にも減塩を心がけることにも触れておきます。具体的な塩分量の一覧等は高血圧症等合併している症例で用います。

塩分量に限らず糖尿病腎症、高血圧、脂質異常症など合併症を併発している症例ではそれぞれのガイドラインに従うものとします。

糖尿病食品交換表。

原則としてどの病型にも用いられる基本的な食事療法の指導ツールと言えます。しかし、患者によっては理解が難しかったり、2型糖尿病であってもインスリン分泌不全でコントロールがうまくいかなかったりというようなケースもあるので為、指導ツールの一つであるという認識が必要です。

必ずしも糖尿病食品交換表に沿った指導を行う必要はなく、一人一人に見合った指導を行います。

糖尿病食品交換表のルール

栄養素毎に4群6表と調味料に分類されることと、80kcal分が重量で記載されていてそれを「1単位」とするということを説明します。

また、同一表内での単位交換はできても、他表同士での食品交換は栄養バランスが崩れることから行わないことなど糖尿病食品交換表のルールを挙げます。

交換表の使用法。

1日の指示エネルギーを80で除して単位に直すことから入ります(指示エネルギー1600kcal=1600÷80=20単位)。

糖尿病食品交換表第7版から炭水化物比率が50%、55%、60%から選択できるようになっています。

担当医の指示により単位配分が変わってくるので、単位配分表は表の外枠だけ作成しておき、指導前に栄養士が書きこんで配布すると良いでしょう。

献立、盛り付け

糖尿病食品交換表を使用した場合。

交換表の単位配分例に沿って献立の立て方を説明します。

まず主食(表1)を決め、それから主菜(表3)と、調理法を考えます。最後に副菜を決めると献立の骨格が決まります。

糖尿病食品交換表を使用せず指導した場合。

膳組の絵などを用いて一汁三菜(主食、主菜、副菜2品)になるような献立作成について説明します。

食品交換表に準じた食事療法を遵守しているにも関わらず血糖変動が大きい場合。

食品の選択に際してはGI値(グリセミックインデックス値)を参考にすることも指導項目に加えます。

盛り付け、工夫。
主菜(表3)は単品で出すばかりでなくー

海藻類やきのこ類、野菜を添えてボリュームを出すようにする。

早食い防止の為に、魚は切り身より尾頭付きで出す。

大皿盛りではなく個別盛りにすることなどといった工夫点を挙げておきましょう。

食事記録

患者の理解度によっては食事内容を記録させることも指導します。献立名、食材名、調味料、およその分量を記録できるようにします。パンフレットと一緒に3日分程度の白紙の記録表をつけておくようにするので、準備します。おやつやアルコールなど、食事以外で摂取したものも記載できるように欄を設けましょう。

アルコール飲料・菓子類・嗜好飲料・健康食品

アルコール飲料

原則禁止とする旨を明確にしたうえで、主治医の許可があった場合1~2単位分(上限を2単位とし、指示エネルギーのおよそ10%程度)程度摂取できることがあります。1単位の目安を絵図と共に一覧にしておくと分かりやすいです。

ただし、休肝日を設けることと、他の表(特に表1)と交換できないことは明確にしておかなくてはいけません。

併せて、つまみ等の選び方のポイントを記載しておきます。

巷で流行っているノンアルコールビールについても必ず質問が出るので、説明できるように資料を揃えておきましょう。

菓子類

砂糖(ショ糖)を多く含むので好ましくない食品であることを明確に記します。どうしても止められない患者には人工甘味料を使用した手作りお菓子や、低エネルギーの市販のお菓子を紹介するなどの柔軟さも時として必要ですので、レシピや資料を揃えておきましょう。

嗜好飲料

清涼飲料水と砂糖(ショ糖)と血糖値の上昇速度についての説明と併せて控える旨を明示します。

最近は低カロリー、ノンシュガーなどの商品も多くなっているので、「無糖」「ゼロカロリー」「ノンカロリー」「シュガーレス」の違いを一覧表にしておくと良いでしょう。

ただ、控える旨を明示するだけではなく、ブラックコーヒー、ストレートの紅茶、抹茶等は問題ないことや、甘党で苦いものが苦手な人には人工甘味料を入れて飲む方法など補足しておくと、取り組みやすく感じられます。

健康食品・サプリメント

市販の健康食品やサプリメントについては、状況によって効能が変わります。エビデンスに乏しいのでケースバイケースです。

しかしながら、栄養指導の際に質問が出る為、その場合は一旦商品を預かり、成分や効果等を調べ、主治医と相談のうえで許可できるかどうかを決めましょう。

その場合も効能については保障できないことを伝えておきます。

間食・補食

間食

低血糖予防などが頻繁に起きる患者以外には基本的には勧めません。間食に適した食品(表2、4)を1日の指示単位内で調整することを明示します。

補食

血糖変動幅が大きいケースや、運動など強い負荷がかかることを実施した場合に、低血糖予防として必要な単位分を1日の指示単位に上乗せすることを明示します。間食と補食の違いを明確に示します。

外食・中食

独居の高齢患者や障害を持つ患者等、社会生活を営むのに困難を生じる例がある為、必ず押さえておく必要があります。

外食・中食はバランスが悪くなる場合がありますが、その中でも比較的バランスを取りやすいメニューを紹介します。惣菜等の選び方のポイントについても箇条書きにしておくと良いでしょう。

単に調理が苦手という患者であれば、簡単に作れるレシピや半調理品使用したレシピを準備して指導することもあるので、配布できるように準備しておきましょう。

合併症

肝疾患の合併症とアルコールについて。

肝臓疾患とアルコールの関係と、アルコールの適量(1日25gまで)といったことをまとめます。

脂質異常症について(高TGの場合)

飽和脂肪酸、ショ糖、果糖を控えることを説明します。飽和脂肪酸を多く含む食品の一覧を作成しておきます。

脂質異常症について(高TCの場合)

コレステロールを多く含む食品の一覧を作成しておきます。1日200㎎以下で指導しますので、1単位の食品重量と、それに含まれるコレステロール量と併せて明示しておく必要があります。

また、食物繊維とコレステロールの関係についての説明文と必要量も明示します。

高血圧

1日6g未満が推奨されます。調味料に含まれる塩分量の一覧表を作成します。カリウムを多く含む食品の一覧もあるとNaの排出との関連で説明しやすいです。

糖尿病腎症

塩分量、たんぱく質摂取量や制限の有無は病期によって異なりますので糖尿病腎症生活指導基準に準じて指導します。

低血糖

インスリン、内服薬を使用中の患者様には指導が必要です。ブドウ糖を携帯し、低血糖症状が起きた場合はブドウ糖を摂取することを明示したうえで、手元にない場合の代替品を紹介します。具体的な商品名を挙げておくと分かりやすいです。

内服薬はα‐GI剤を服用している場合ブドウ糖でなくては改善がみられないことも必ず明記しておきます。

食事療法の支援、継続ポイント。

上記項目について指導終了後、理解度を評価しつつ、患者がどの程度実行できそうであるかを確認します。

どれも難しくて実行できないようであれば、最低限これだけは、というポイントだけをパンフレットから抜粋したり、別の媒体を個別で準備したりする必要があります。

また、ライフステージごとのポイントを押さえておきましょう。

食事療法は、患者自身が主治医になりコントロールしていくものであり、栄養士はあくまでも支援の立場です。患者の抱えている問題や背景、環境、考え方を尊重しつつ、行動変容につながるようにパンフレットを準備し、どの指導媒体を用いるかを適宜見直していくことが大切です。

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