公開日:2016年8月28日

管理栄養士におけるロコモティブシンドロームの栄養評価と患者教育

はじめに

ここではロコモティブシンドロームを解説するわね
サルコペニアは重要なキーワードですね

目次

ロコモティブシンドロームとは

ロコモティブシンドローム(運動器症候群)とは「運動器の障害による要介護の状態および要介護リスクの高い状態」をいいます。

超高齢社会を迎えた今、要介護認定率は大きな社会問題になると予想されます。

骨折・転倒・関節疾患などの運動器障害は要介護・要支援に至る原因で高い割合を占めています。

このような背景のもと、2007年に日本整形外科学会は健康寿命の延伸を目的にロコモティブシンドローム(通称『ロコモ』)を提唱しました。

ロコモティブシンドロームは、

  • 筋肉
  • 関節
  • 軟骨
  • 椎間板

といった運動器のいずれか、もしくは複数に障害が起き、歩行や日常生活に何らかの障害をきたしている状態をさします。

引用元 きらり健康生活協同組合

サルコペニアとは

サルコペニアとは、「加齢に伴う筋力の低下、または筋肉量の減少」をさします。サルコペニアを詳しく知りたい方はサルコペニアはどのような人がなりやすいのか?糖尿病との関係をご覧ください。

サルコペニアはロコモティブシンドロームに含まれることになります。

サルコペニアは骨格筋量の低下を必須として、それ以外に筋力または運動機能の低下のいずれかが存在すればサルコペニアと診断します。

さらに、サルコペニアは原発性と二次性に分類されます。

原発性のサルコペニアとは「加齢とともに出現する骨格筋量ならびに筋力の低下」とされ、

  • 二次性サルコペニアは活動によるサルコペニア
    (廃用性萎縮)
  • 栄養によるサルコペニア
    (飢餓、エネルギー量摂取不足)
  • 疾患によるサルコペニア
    (急性疾患や炎症による侵襲、悪液質など)

によるものに分類されます。

サルコペニアの評価、栄養管理のプランニングをする上で、サルコペニアの原因が上記のどれに分類するのかをアセスメントする事が重要になってきます。

サルコペニアおよびロコモティブシンドロームと栄養

サルコペニアおよびロコモティブシンドロームは、筋肉や骨などの減少・機能不全が大きく関与しています。

そのため、身体活動だけではなく、栄養も重要な要素となります。

ロコモティブシンドロームに有効な栄養素

ロコモティブシンドロームの予防・治療には、適切なエネルギー、バランスの良い食事が基本になります。

たんぱく質や各種ミネラル・ビタミンが必要になりますが、特にカルシウム、ビタミンD、ビタミンK、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビタミンCはより十分な摂取が望まれます。

【カルシウム】 

カルシウムは、骨の健康に欠かすことのできないミネラルです。

カルシウム摂取量が多いほど、骨密度や骨塩量が高値であるという報告も多くあります。

しかし、カルシウムはあまり吸収率が高い栄養素ではありません。食品にもよりますが、カルシウムの体内への吸収率は約20〜50%程度と考えられています。

また、カルシウムの吸収率は、一緒に摂るものによっても変わります。

カルシウムの吸収を阻害するものは、シュウ酸、フィチン酸、脂質の多い食事、タンニン、多量のリンです。

一方、カルシウムの吸収を促進するものは、ビタミンD、カゼインホスホペプチド(CPP) 、乳糖です。

日本人のカルシウム摂取水準は欧米人に比べると低く、国民健康・栄養調査の結果では、国民1人1日当たりの平均摂取量はここ数年減少傾向にあります。

その意味でもカルシウム摂取量を把握することは重要です。

下記に簡易カルシウムチェック表を示します。合計点数を40倍にした値が、1日当たりのカルシウム摂取量の推定値となります。

カルシウム自己チェック表

\
0点 0.5点 1点 2点 4点 点数
1 牛乳を毎日どのくらい飲みますか? ほとんど飲まない 月1〜2回 週1〜2回 週3〜4回 ほとんど毎日
2 ヨーグルトをよく食べますか? ほとんど食べない 週1〜2回 週3〜4回 ほとんど毎日 ほとんど毎日2個
3 チーズ等の乳製品やスキムミルクをよく食べますか? ほとんど食べない 週1〜2回 週3〜4回 ほとんど毎日 2種類以上毎日
4 大豆、納豆など豆類をよく食べますか? ほとんど食べない 週1〜2回 週3〜4回 ほとんど毎日 2種類以上毎日
5 豆腐、がんも、厚揚げなど大豆製品をよく食べますか? ほとんど食べない 週1〜2回 週3〜4回 ほとんど毎日 2種類以上毎日
6 ほうれんそう、こまつな、チンゲンサイなどの青菜をよく食べますか? ほとんど食べない 週1〜2回 週3〜4回 ほとんど毎日 2種類以上毎日
7 海藻類をよく食べますか? ほとんど食べない週1〜2回 週3〜4回 ほとんど毎日
8 ししゃも、丸干しいわしなど骨ごと食べられる魚を食べますか? ほとんど食べない 月1〜2回 週1〜2回 週3〜4回 ほとんど毎日
9 しらす干し、干しえびなど小魚類を食べますか? ほとんど食べない 週1〜2回 週3〜4回 ほとんど毎日
10 朝食、昼食、夕食と1日に3食を食べますか? ほとんど食べない 1日1〜2食 欠食が多い きちんと3食

(石井光一,ほか. Osteoporosis Japan 2005;13:497-502より)

【ビタミンD】

ビタミンDは腸管からのカルシウム吸収を促進し、骨代謝にも関わるため、骨の健康に必須の栄養素です。

ビタミンDの供給源となる食品は限られており、魚類ときのこ以外の食品には、ほとんど含まれていません。

そして、きのこの摂取頻度はそれほど高くはないので、魚類の摂取量がビタミンDの摂取に大きく影響していると言えます。このようにビタミンDは摂取しにくい栄養素であるため、不足しがちなので、注意が必要です。

ビタミンDの特徴には、食品として供給されるルートとは別に紫外線に当たることにより皮膚でも生成されるということがあります。

皮膚で生成されるビタミンDの量はビタミンDの供給にとって非常に重要となります。そこで、適度な日光浴をすることも必要になります。

また、最近では、ビタミンDの1日800IU以上の摂取が大腿骨頸部骨折や非椎体骨折の予防に有効であるとの報告もあります。

【ビタミンK】

ビタミンKの摂取量が少ないとカルシウムの骨への沈着が悪くなるために骨折のリスクが高まると考えられています。

ビタミンKは納豆に特異的に含まれており、それ以外では緑の葉物の野菜に含まれています。

下記に簡易のビタミンK摂取量チェック表を示します。合計点数が40点以上になることが望ましいとされています。

納豆(1パック:50g) 1.
ほとんど食べない
2.
週1〜3回
3.
週4〜5回
4.
1日1回以上
野菜(1回の食事当たり) 1.
ほとんど食べない
2.
少し食べる
3.
普通に食べる
4.
たっぷり食べる

野菜の「普通に食べる」は刻んだ野菜を片手に1杯くらい、あるいは小鉢1杯くらいが目安

納豆 1:0点 2:10点 3:25点 4:40点
野菜 1:0点 2:10点 3:15点 4:25点

(上西一弘, ほか. Osteoporosis Japan 2011:19:513-8より)

【ビタミンB群】

近年、生活習慣病と骨の関係について新しい知見が数多く発表されてきています。

生活習慣病が骨折のリスクを高める原因としては、酸化ストレスによる骨芽細胞形成の抑制と骨細胞のアポトーシスの亢進による骨の脆弱化、酸化ストレスによる終末糖化産物(AGEs)の骨基質への蓄積による骨の脆弱化、さらにこの酸化ストレスを高める血中のホモシステイン高値などが原因と考えられています。

したがって、酸化ストレスの低下、ホモシステインの増加抑制に働く栄養素の摂取が生活習慣病による骨折のリスクを減らすために重要となります。

具体的には、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸の摂取が重要と言えます。

【ビタミンC】

骨質を規定する重要な骨基質はコラーゲンであり、ビタミンCは、骨の基質であるコラーゲンの生成に必要な栄養素です。

サルコペニアの栄養管理

また、サルコペニアの対応としては上記で述べたようにサルコペニアの原因によって対応が変わってきます。

加齢によるサルコペニアでは、十分なたんぱく質、とくに分岐鎖アミノ酸(BCAA) の摂取が重要です。

高齢者では少なくとも1.0〜1.2g/kg/日のたんぱく質摂取が推奨されています。

持久性トレーニングとレジスタンストレーニングを実施している場合には、1.2~1.5g/kg/日のたんぱく質摂取が推奨されています。

ただし、重度の腎疾患がある場合にはたんぱく質の摂取制限が必要です。

また、糖質とたんぱく質を同時に摂取すると摂取したたんぱく質の利用効率が高まり、筋たんぱく質合成を高めます。

活動によるサルコペニアでは、早期離床と早期経口摂取の実践が最も重要です。

栄養介入としてはたんぱく質・分岐鎖アミノ酸の十分に摂取することが廃用性萎縮の緩和が一部可能であると言われています。

栄養によるサルコペニアでは、栄養改善を考慮した栄養管理が必要です。

低栄養の改善を目指す場合、1日エネルギー必要量=1日エネルギー消費量+エネルギー蓄積量(1日200~750kcal)とします。

疾患によるサルコペニアでは、栄養療法だけでなく運動療法、薬物療法を含めた包括的な対応が最も重要になります。

サルコペニア肥満への対応は、5%の体重減少を目標にエネルギー制限を行うとともに、高たんぱく質と運動介入(レジスタンストレーニングと持久性トレーニング)の併用が予防と治療に最も有効です。

ロコモティブシンドロームの患者教育

サルコペニア・ロコモティブシンドロームのアセスメントでは、まず体重を評価します。

やせ、標準、肥満により介入の内容が異なってきます。

指導する際にもBMIを使用し、対象者に低栄養対策が必要なのか、肥満対策が必要なのかを理解させる必要があります。

ロコモティブシンドロームは高齢者が対象となる事が多いです。

そのため、教育内容は高齢者でも理解できるような単純な内容とし、健康で規則的な生活が送れるような基本的なこと(食事を抜かない、バランスよく食べる)を重点的に指導すると良いでしょう。

高齢者は食が細くなっていたり、食事の支度が大変になり、このような基本的な事が出来ていない場合があるからです。

また、最初から完璧を目指すのではなく、少しずつ対象者の出来る範囲で行動目標を立てる事が重要です。

指導媒体を使用する際は、内容を簡単に絞り、一度に多くの情報を与えすぎない事が大切です。

難しい印象を与えてしまうと実行する前から「できない」というイメージがついてしまいます。

指導媒体の作成のポイントとしては文字を大きめにします。

小さい文字では読みづらくなってしまいます。イラスト等も取り入れると難しいイメージも払拭され、さらに読みやすくなります。

その他に、ロコモティブシンドローム予防としては運動も重要であるため、リハビリスタッフ等とも連携しながら多職種共同で教育することが大切です。

引用・参考文献:
葛谷雅文(2014).サルコペニアおよびロコモティブシンドロームにおける栄養の重要性 臨床栄養 124,274-277
第15回日本骨粗鬆症学会シンポジウムREPORT
若林秀隆(2014).サルコペニア・ロコモティブシンドローム改善のための栄養介入 臨床栄養 124,298-304
上西一弘(2014).ロコモティブシンドローム予防・改善に有効なミネラル・ビタミンの摂取 臨床栄養 124,293-297

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