公開日:2016年8月24日

障害児の栄養のポイント

はじめに

障害児とはWHOの定義によると「保健分野において、人間の器官系レベルでの機能損傷、個別レベルでの能力障害、社会生活レベルでの社会的不利のために他の人々と社会生活に参加する機会を失う、または制約されている状態にあるもの」とされています。

障害と一言で言っても「知的障害」と「身体障害」に大きく二分されます。

知的障害児では、知的面のみならず、情意面や身体面の発育にも障害が及んでいることがあります。
身体障害には視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、言語発音障害、循環器障害などがあります。

両者を併せ持つこともあります。

障害児には摂食機能障害や摂食行動発育遅延などが認められることがしばしばあります。
健常児の場合には、乳幼児期から幼児期前半でほぼ固形食を自力摂取できるようになりますが、障害のある乳児ではそれより長い期間要することもあります。

しかし、継続的な適切な指導によって摂食行動に学習効果は期待できます。

障害レベルによって、生活における精神活動や身体活動に差が生じますが、「食事」の持つ役割、意義は障害の有無やレベルに関係なく平等でなくてはなりません。

障害児は健常児と比較すると外部との接触や刺激が少なくなりがちなので、食事の持つ意義は健常児より重要とも言えます。

障害児の食生活では生命維持や成長の為に必要不可欠な栄養素の補給のみならず、美味しく楽しく食べることを通じて摂食機能や精神的・肉体的活動の発達を促進させます。QOL(生活の質)の向上促進を図れるよう配慮する必要があります。

養育者や介護者は摂食機能の発育を促進できるような食事介助や調理法について学習する必要があります。当然栄養士はそれを指導できる立場でなくてはなりません。
単にそれについての知識習得や指導にとどまらず、可能な限り自立した日常生活、食生活を送ることができるよう障害児やその家族を支援することです。
障害児への栄養士の関わりで重要なことは、持っている機能を十分育てて、サポートするというスタイルです。

目次

食事形態

身体障害や摂食機能障害により、咀嚼や嚥下が困難である場合には、 障害児が自力で食事摂取できるために、身体機能や摂食能力に合わせて食形態を工夫する必要があります。
摂食障害がある場合の食事形態は、 対象者の機能状態に合わせて段階的に準備しなくてはなりません。
摂食訓練をしながら口唇や舌の動き、口腔内の状態、嚥下状況を確認し、段階別にレベルを上げていく必要があります。

摂食訓練をする場合の食形態や提供する食形態は言語聴覚士(以下ST)のいる施設では日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「 嚥下調整食学会分類2013(以下学会分類2013)」を参照し決定するようになるでしょう。

ST不在の施設では以下を参考に訓練、食形態の決定の参考にするのも良いでしょう。

手指麻痺、障害による自力摂取困難

区分

常食(普通食・一般食)

食形態、調理法等

自力摂取しやすいよう一口大にカットしたり、主食をおにぎりにしたりする。

歯の欠損等による咀嚼困難(歯茎での咀嚼可能)、舌の動き良好

区分

軟食(軟菜食)

食形態、調理法等

身の柔らかい魚やペースト状にした肉。豆腐や卵料理。軟らかく調理した食物繊維の少ない野菜類。パサついて食べにくそうな場合はあんなどをかける。

歯の一部欠損等による咀嚼障害(嚥下は可)

区分

コード2-2、コード3(刻み食、やわらか食、ソフト食等)

食形態、調理法等

形はあるが、舌と口蓋間で押しつぶしが可能なもので食塊形成が容易であり、口腔内操作時の多量の離水がなく、一定の凝集性があって咽頭通過時のばらけやすさがないもの。

下顎、舌上下運動のみ可、食塊形成不可、誤嚥有り

区分

コード0t、コード2-1(嚥下訓練開始食、ミキサー食、ペースト食等)

食形態、調理法等

滑らかで均質なもの。ミキサーでペースト状にし、誤嚥する際はとろみ調整食品でとろみをつける。酢の物は不適。また、訓練開始直後は誤嚥した際のリスクを考慮し、お茶や果汁等たんぱく質を含まず栄養価が低い食品にとろみ調整食品でとろみをつけたものが望ましい。

咀嚼・嚥下障害があり、下顎、舌上下運動のみ

区分

コード1j(嚥下訓練ゼリー食、嚥下訓練開始食、ムース食等)

食形態、調理法等

咀嚼に関連する能力は不要で、スプーンですくった時点で適切な食塊状となっている、均質な滑らかで離水が少ないゼリーやプリン、ムース状の食品。

咀嚼・嚥下不可能

区分

濃厚流動食

食形態、調理法等

経腸栄養法、経鼻経管空腸栄養法、口腔ネラトン法、胃瘻

食形態、調理法などが頭に入っていないと難しそうですね

嚥下調整食学会分類をおさらいしておく必要がありますよ

食品の目安・調理の工夫

摂食機能障害児に対しては食形態に留意することは勿論ですが、 食品の選択も重要になってきます。食品群別に以下の点に留意して献立作成をすると良いでしょう。

穀類

粥、パン(フランスパンなどぱさついたものよりクロワッサンのように油分を含むものがパサつきが少なく望ましい)、パン粥、うどん、そば、そうめん、冷麦(しっかり煮込むかゼラチン寄せなど)。
水分の少ない飯や赤飯、餅は不適。

芋類

里芋、馬鈴薯、さつま芋を柔らかく煮てマッシュする。山芋はとろろで提供(だし汁が多すぎると粘度が不足の場合もあり)。
こんにゃくや白滝は不適。

種実類

ごまは擦って提供。ナッツ類はバター状なら可。栗はマッシュ。
擦っても細かくなりにくいナッツ(アーモンド等)や銀杏は不適。

豆類

豆腐(嚥下障害レベルが悪い場合は絹が望ましい)は良質のたんぱく質であり積極的に献立に取り入れたい。
おからはパサつかないようだし汁を多めにしたり、とろみ調整食品でとろみをつけるなどの工夫は必要。
大豆や枝豆は刻んでもばらけやすいことからきなこなどで代用すると良い。ただし、水分を含ませしとらせて提供するなどして、口腔内でばらけて誤嚥にならないよう配慮は必要。
咀嚼した際、咀嚼した際に口腔内で離水しやすい高野豆腐やがんもどき、ぱさつきやすい油揚げは不適。

魚介類

身が柔らかい白身魚。ただし、青魚は不足しないよう、固い場合はすり身で使用するなどの工夫を。ただし、煮込んでも柔らかくならない竹輪やいかやタコ、海老は好ましくない。既製品の練り製品は塩分含有量の問題からも望ましくない。干物の魚も固く、塩分も多いことから不適。

肉類

柔らかく調理したもの。ひき肉は柔らかく扱いやすいが、口腔内でばらけるので、二度挽きしてもらうのも良い。とろみは必須。鉄分の不足にならないようレバーもペースト状にするか、軟らかく煮るなどして提供する。

卵類

卵豆腐、温泉卵、茶わん蒸し、ポーチドエッグなどふんわり柔らかく調理したもの。ただし、半熟で提供する際は衛生管理には十分注意する。
卵焼きや固ゆで卵の場合はとろみのついただし汁をかけるなどの工夫を。

乳製品

牛乳は誤嚥する場合はとろみ調整食品でとろみをつけるか、ヨーグルトに代替すると良いでしょう。
ホワイトソース、カスタードクリーム、グラタン、ポタージュなどの調理法で形を変えて摂取するのも方法です。
チーズはとけるチーズが食べやすいでしょう。

野菜類

かぶや大根などの根菜類、冬瓜、青菜、キャベツ、茄子、白菜など水分を多く含み食物繊維の少ない野菜はお勧め。トマトは湯剥きにしたほうが良いでしょう。筍、牛蒡、セロリー、漬物、生野菜など食物繊維が多い野菜は圧力鍋を使用し、繊維質が断裂されるような調理法にするか、一度ペースト状にしてからゲル化剤等で凝固させたものにしましょう。

きのこ

なめこなどとろみがつきやすいものは小さくカットして使用可。椎茸、しめじやエリンギなど煮込んでも柔らかくなりにくい食材は不適。

海藻類

煮込んでも柔らかくなりにくくぱさつく食材である為不適。のりの佃煮を粥にトッピングして使用する程度は可。

果実類

バナナ、いちごなど種が誤嚥につながりにくいものはそのまま提供できる。桃やプラムは種を取り除くこと。固いりんごや梨はコンポートにして提供するなどすれば可能。柑橘類は缶詰を使用しても良い。ただし、缶詰や水分の多い果実類はシロップにとろみ調整食品でとろみをつけて提供するなどして、誤嚥を防ぐことが大切。
パイナップルや柿など食物繊維が多く固い果実は不適。場合によっては牛乳と併せてジューサミキサーにかけ、とろみ調整食品でとろみをつけて提供しても差しさわりない。

献立作成が難しそうですね。とても不安です

嚥下食を理解していないと、献立作成も保護者への指導も難しいですよ。 調理もしっかり勉強しておかないといけません。調理現場で学ぶことも大切です。 自分自身の不安は指導対象者にも不安感を与えます。自信を持って指導できるようしっかり学びましょうね

食事用自助具について

小児にとって食べる楽しみを理解させることは食育の基本です。
障害児にとっても同じであり、 自力摂取できるよう支援することが重要です。障害による食事上の不便、不自由を克服する為の 自助具は、個々の摂食能力に応じて使用します。また、 食事の自立を促すよう、介助は必要最低限にすることも大切です。
適切な食事介助を実施するためには、それら自助具の特徴や使用方法を栄養士も理解しておく必要があります。

自助具については見たこともないし、殆ど知識がないのですが、、、

福祉関係のセミナーでも自助具の説明や展示をしていることがありますよ。積極的にセミナーや研修会に参加しましょうね。自助具の説明や指導を栄養士が行うことはありませんが、知っておくことは大切ですからね

食事介助

障害児の食事介助を行う際の留意点を示します。

摂食機能・摂食行動のレベルの把握

障害児の摂食機能の発達レベルを的確に把握し、それに見合った適切な調理形態や食形態、食品選択を行うことが大切です。また、 個人毎の栄養状態の把握や好み、食生活習慣に関する情報収集も体調変化や以上発見の早期発見に繋がります。

食事開始の準備

食事開始30分程度前には離床、排泄、洗顔をすませて食卓に移動させるよう声かけします。移動が困難な場合もベッドで状態を起こしておくことが大切です。

自助具や介護用具の使用

自立への支援として、喫食しやすいように工夫・改良された適切な自助具や食器の使用、選定を行い、障害児が食事を存分に楽しめるようにします。

摂食時の姿勢

障害児は食事に時間を要することが多く、 嚥下しやすく安定した姿勢がとれるように配慮する必要があります。嚥下時に食塊をスムーズに咽頭に送り込める軽度の障害児では45度~90度(スタンダード)の座位が基本です。嚥下時に食塊を自力でスムーズに送り込めない重度障害児は15~45度の仰臥位の姿勢を基本にします。

感覚過敏の障害児に対する対応

重度の障害児は、口唇、口腔内に感覚過敏が生じやすく、顔や口唇、頬に触れると緊張したり、拒否が見られる場合があります。このような場合は、毎日少しずつ触刺激に慣れさせていくようにします。

スプーンやフォークや箸を強く噛み、引き抜こうとするとかえって強く噛んで離さない場合も見られます。そういった場合には無理に引き抜こうとせず、力が抜けるまで様子を見ます。

指で軽く口唇をとんとんと叩くように触れると力が抜けることもあるので、試してみると良いでしょう。

食事の介助方法

食事介助する場合には、 介護者は障害児と同じ目線で介助することが基本です。栄養士がミールラウンドを行う際などの声かけの際も同様です。

「いただきます」「ごちそうさま」などの食事のあいさつを習慣づけることは大切です。
食前に少量の水分を含ませたり、飲ませたりし、唾液や胃酸など消化液分泌を促進させるのも良いでしょう。
口に運ぶ食べ物の量が多くなりすぎないよう、少量ずつとすることが大切です。また、 食べさせる速度も子供の食べる速度に合わせます。早すぎても遅すぎてもいけません。

同じ料理を続けて口腔内に入れず、品目を変えて 三角食べをさせるのは、健常児と同様です。
例え、理解できなくとも食事の内容などを説明したり、ゆったりした楽しい気分で食事ができるよう食環境を整えることも基本です。
子供の体調や嚥下状態に変化や異常がないか、食事中は観察を怠りません。
毎日食事摂取量や水分摂取量を記録しておくと、体重記録と併せて栄養状態の評価がしやすくなります。
食事介助に栄養士が入るケースは少ないかもしれませんが、 養育者や食事介助者へ指導はできるよう施設では食事介助風景を観察したり、知識として知っておく必要はあります。

食後の口腔ケア

口腔衛生の為水やお茶を食後は飲ませます。食後の歯磨きは虫歯予防の為に必ず実施しますが、うまく磨けないケースが多いので、仕上げ磨きの必要があります。

栄養士も食事介助に入ることがありますか?

基礎知識や食事介助のスキル不足の栄養士が食事介助に入ることは対象者を危険にさらすことにもつながります。施設によって食事介助を栄養士が行うこともあるので、しっかり勉強しておきましょうね

おわりに

害児の栄養について学ぶ際、摂食嚥下障害や摂食行動についての理解を深めることは障害児支援の際の必要な基礎知識となります。
摂食嚥下障害食についての理解は必須なので、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食学会分類2013(以下学会分類2013)」をしっかり頭に入れておきましょう。
また、嚥下障害食や経腸栄養法での長期栄養管理が必要になることも多く、エネルギー、たんぱく質量、微量元素、水分量などの評価と対策について等栄養アセスメント能力は重要です。

非常に幅広い知識が必要な分野と言えます。

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