公開日:2016年8月23日

大量調理における食事計画(1)献立の要件

はじめに

食べることを生存的意義、社会・文化的意義としてとらえることは、普段の生活において機会は少ないといえます。

しかし、栄養士という立場では、献立作成するうえで、基本的な考えかたは履修した基礎教科はもちろんのこと、これに加え、 広く社会・文化的条件にも視点を置き、さらに 調理技術などテクニックを取り入れて展開させてほしいと思います。

献立の考えかた

‘食べる’という行為には、ふたつの意義があると考えられています。

生存的意義

最低限の生命、生活の維持を目的として、栄養素の体内へ取り込むことで、これは人間に限らず、すべての動物についていえ、生物としての共通の意義であるといえます。

社会・文化的意義

料理または食べる行為そのものを、よりよい人間関係形成の媒体としてとらえることができます。おいしい料理を、楽しい雰囲気で、人と語らいながら食べる、これは生存的意義よりも、強くわたしたちの食生活に反映しているといえます。

この2つの意義を具現化する営みとして、わたしたちは食生活の場をもち、そのありかたを考えていくものが献立であるととらえることもできます。

栄養士の立場から献立を考えていくには、生理・生化学などの基礎知識をはじめとして、臨床栄養学、母性・乳幼児などの応用栄養学の知識が根底になければなりません。

しかし、わたしたち人間は栄養素そのものをそのままの形で取り入れることはできず、栄養素を含む食品を選択し、これに調理操作を加えて、料理という形に整えて摂取します。

つまり、あまりに栄養素にこだわりすぎると、とても受け入れられそうにない料理になってしまうため、あくまでも、人間が食べる料理をつくるという心構えを持つことが何より大切だといえます。

献立計画

献立計画には、実に多くの条件を考慮する必要がありますが、実際は口でいうほど簡単なものではありません。

今現場でベテラン栄養士、管理栄養士の諸先輩がたも、頭を抱えてきた時期が少なからずあるはずです。

一般に考えられている条件の概念を以下のように示すことができます。

献立	栄養 食事摂取基準 給与栄養目標量 安全 食品衛生 個人衛生 施設・設備衛生
 おいしさ 化学的感覚	物理的感覚 心理的感覚 生理的感覚 調理能力 作業人員 施設設備器具 作業能力	食品 食品構成 食品流通 出回り期 経済
 予算の制約 食材料費

栄養

からだに必要な栄養素はどのようなものか、これが体内に取り込まれてどのような働きをするのか、また、過剰や欠乏あるいはバランスが取れていないときには、からだにどのような障害が起こるのか、という点を十分に理解しておく必要があります。

人間のからだを車にたとえると、摂取したもののうち、糖質と脂質はエネルギー源(ガソリン)となり、タンパク質はからだ(車のボディー)を形成します。

さらに、ビタミンB・Cは代謝過程の補酵素(エンジンオイル)として働き、ほかのビタミンやミネラルは生理機能の調整(電子機器)をしているといえます。

つまり、車を速く走らせようとすれば、糖質と脂質だけでなく、ビタミン類などの摂取を増やす必要があることがわかります。

また、わたしたちは摂取したものをそのままの形で体内に取り込むことができません。

消化酵素によってグルコースやアミノ酸といった小さな分子に消化されて初めて、吸収されます。

糖質、タンパク質、脂質などの各栄養素は、それぞれ特有の消化・吸収の過程から処理されます。

ご飯やいも類など糖質を多く含む食物は、口腔内で分解され、さらに十二指腸で単糖類になったのち、吸収されます。

しかし、肉や魚、卵などのタンパク質は、口腔内では酵素の影響を受けず、膵臓で分解され、その後、糖質同様、十二指腸でアミノ酸まで分解され吸収されます。脂質もタンパク質と同じように、膵臓で分解が始まりますが、肝臓から分泌される胆汁酸を必要とし、この作用により十二指腸および空腸の上部で吸収できる形になります。

安全

ここでいう安全というのは、衛生管理面から、対象者に安全な食物を提供するためにどのような点に気を付けるか、気を付けたらよいかでとらえます。

基本的には、人、食品、施設・設備という3つの立場から考えます。

人は、直接の調理担当者を含めて食品を取り扱う者すべての衛生上の問題を指し、食品は、品質、添加物、容器包装など、食品衛生法(平成二六年六月一三日法律第六九号改正)で規定されているような事項、施設・設備関係は、採光、通風、温度、湿度、そして食器の洗浄、消毒、保管など、これらに関わる一切の条件が考えられます。

おいしさ

料理をいかにおいしく食べてもらうか、ということは、提供する際、大切な条件のひとつです。どれだけ栄養素が充足され、食品の組み合わせがよくても喫食されなければ栄養素の体内利用は期待できません。

おいしさとは、過去の経験の累積が大きく影響し、食品や料理に対して、好ましい感情がおいしさにつながっていると考えられます。

食品

同じ栄養素を摂取するために、どのような食品を選択し、どのくらい使用したらよいか。また、これらの食品をどのように組み合わせたらよいか。これは、食品単価、対象者の嗜好、どのような料理の素材として考えるなど条件によって異なります。

食品を選択する際に忘れてはいけないものが‘旬’です。1年で最もおいしく、栄養価が高くなる時期のことで、人間がそれぞれの季節に必要としている栄養素を十分含んでいる時期ともいえます。

現在は、多くの食品が旬に関係なくいつでも手に入るようになっていますが、そのとき一番おいしいものを選べるように、いつが旬かを把握しておくことをおすすめします。

野菜 果物
たまねぎ、さやえんどう、グリーンピース、みつば、たけのこ なつみかん、いちご、びわ
ピーマン、トマト、ゴーヤ、枝豆、なす、きゅうり さくらんぼ、パイナップル、もも、メロン、すいか
にんじん、ぎんなん、まいたけ、チンゲン菜、まつたけ、さといも、さつまいも 梨、柿、ぶどう
ほうれんそう、春菊、だいこん、ねぎ、水菜、小松菜、白菜 りんご、いよかん、レモン、みかん

また、祝日や施設の記念行事など特別な日の献立は年間を通して計画しておくことが必要です。その提供日時や献立内容をあらかじめ決めておくことで、通常の献立内容を食品が重なることなくより一層の特別感を演出することが可能になります。

行事名 月日 おもな料理
正月 1月1日~3日 雑煮、屠蘇、数の子、黒豆、田作り、たたきごぼうなど
七草 1月7日 七草がゆ
鏡開き 1月11日 鏡もち入り小豆汁粉
小正月、成人式 1月15日 小豆がゆ、赤飯
節分 2月2日~3日 煎り豆、巻きすし、いわし
桃の節句 3月3日 ひしもち、雛あられ、ちらしずし、蛤の潮汁、白酒
彼岸 3月18日または9月20日頃から1週間 おはぎ、彼岸だんご、精進料理
端午の節句 5月5日 ちまき、かしわ餅、たいのかぶと煮
七夕 7月7日 そうめん
盂蘭盆 7月13日~15日 精進料理(ずいき、高野豆腐、しいたけなどの精進煮)
月見 8月15日、9月13日 月見だんご、里芋(きぬかつぎ)、栗、枝豆
重陽の節句 9月9日 菊酒、栗飯
玄緒 10月亥の日 亥の子もち
新嘗祭 11月23日 新しい穀物でもち、赤飯
冬至 12月22日または23日 冬至がゆ、ゆず、冬至かぼちゃ
大晦日 12月31日 年越しそば
経済

献立にまつわる食費は、きわめて範囲が広く、食材料費に人件費、光熱水費、設備費などを含めて考える場合、食材料費そのものを食費としている場合があり、施設によって異なります。

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