調理師がスキルアップする為の資格取得は本当に役立つ?

このコンテンツでは下記の方が対象です。
- 調理師士の方でスキルアップ、キャリアアップを考えている人
対象者の方は続きをお読みください。
管理栄養士の烏丸さゆりです。
調理師士がスキルアップ、キャリアアップを求めて調理師士以外の資格を取得したいと考えている人は多くいます。
ポイント!!
しかし実際に役立つのでしょうか。
現状の仕事や待遇に不満がある場合、新しい職場に移るというのも重要な手段です。
しかし、同時に自分自身も成長する必要があるのは言うまでもありません。
ここでは、自身のキャリアデザインをするうえで、資格がどのように影響するかを考えてみましょう。
これらを解説します。
調理師が資格を取るのは本当に有効?
どのような職種であれ、自分がスキルアップしたいと望んでいる人がまず考えるのは資格取得でしょう。
しかし、お金や時間をかけて資格を取得することが本当に役に立つのか? という疑問はつきまといます。
給食施設で働いている人にとってもっとも身近な資格といえば、栄養士や管理栄養士の資格です。
しかし求人情報を見てみると、栄養士の資格を持っていたからと言って、月々の給与額に大きな差があるかというとそうではありません。
職場によっては、数千円から1万円程度の手当が加算されるだけということもめずらしくありません。
栄養士の資格を持っていても調理の仕事をすることが多くー
「仕事が増えたにも関わらず、大して収入は上がっていない」
ーという不満を漏らす人もいます。

調理師が取得すると仕事に役立つ資格とその理由
では、調理師が取得してスキルアップに繋がる給食施設で役に立つ資格にはどんなものがあるのでしょうか?
代表的なものとして以下の2つが挙げられます。
栄養士・管理栄養士
前述の通り、給食施設で働いている人にとってもっとも身近な存在が栄養士です。
栄養士は各都道府県知事の認可を受けたもので、管理栄養士は厚生労働大臣の認可を受けたものという違いはありますが、双方とも国家資格になっています。
栄養士になれば献立の作成を行えたり、栄養の指導ができたりするなど、仕事の幅は調理師に比べて大きく広がります。
また、給食施設以外の職場にも移りやすくなると言えるでしょう。
一方、前項で記載した通り、栄養士の資格を持っていたからと言ってお給料が劇的に変わるかというとそうではないことがほとんどです。
また、栄養士になるためには、国によって定められた養成機関で学ぶ必要があることにも注意です。
栄養士、管理栄養士は調理経験無しでも資格を取ることが出来る
調理師の場合、試験に実技は無いものの、2年以上の実務経験や調理師学校で実技を学んでる前提で資格を与えられます。
しかし、栄養士、管理栄養士の場合は、必ずしも調理経験を必要としません。
このため栄養士、管理栄養士が献立を作成する施設の食事は「栄養は充実しているが味は良くない」場合があります。
現在は飲食店の中にも栄養面を重視したメニューを提供する店が多くなってきました。

専門調理師・調理技能士
専門調理師・調理技能士とは、公益社団法人調理技術技能センターが実施する調理技術技能評価試験に合格することで得られる国家資格です。
一般的には 調理師の上級資格 と位置づけられています。
試験科目は日本料理や西洋料理などに分かれ、その中に給食用特殊料理という項目も存在します。
また、 調理技能士の資格を有していれば、調理師養成施設で教員をすることができるよ うになるため、職業選択の幅も広がります。
ただし、この試験を受験するためには、最低でも 6年以上の実務経験 が必要ということに注意しなければいけません。
また、専門調理師や調理技能士は栄養士などと異なり、給食施設に必ず1人は必要などという決まりはありません。
そのため、資格を有していることで転職が大きく有利になるというケースはあまり見られないようです。
転職のための資格ではなく、自身の調理師としてスキルアップのためと考えるほうが無難です。
今後は専門調理士・調理技能士が重要視される可能性も
外食産業の発展に伴い、調理のオペレーションが簡略化したチェーン店などが普及しました。
これにより、高い技術を持った職人が不足する事態に陥っています。
この状況を打破するべく、居酒屋チェーンや、社員の多い飲食店では実技の講習会を社内で行うケースもあります。

資格取得以外でスキルアップできる方法
調理師の資格取得は重要なスキルアップの手段ですが、それ以外にも道は存在します。
ここでは給食の「量」と「質」という2つの観点から考えてみましょう。
給食施設における「量」とは、「1日何食程度を作るか」ということです。
例えば、学校の給食室で自校の生徒だけを対象に作る職場で働いた場合は日に100食単位ですが、大規模な給食センターに勤めれば、日に2000食以上作ることもあります。
一概に数が多ければ大変というわけではなく、それぞれの現場においてそれぞれの苦労があるものです。
一方、「質」の面はどうでしょうか?
給食施設の中には、美味しくて栄養たっぷりな給食を提供することに定評のある施設や、地産地消を意識して豊かな献立を組み立てている施設などが存在します。
こうした施設で働くことで、自身のスキルを大きく上げることも可能です。
では、質の高い施設はどうやって見分ければよいのでしょうか?
ここで参考にすべきは「全国学校給食甲子園」です。
これは特定非営利活動法人である21世紀構想研究会が主催する大会で、学校給食のさらなる充実を図るために毎年1回行われているもの。2016年末で11回目を数え、権威のある大会として認識されています。
この大会には全国から2000を超える給食施設がエントリーするため、決勝に進むだけでも大変なことです。
【本音】調理師の学びたいという思い
私は和食店に3年、洋食店に4年、その傍らに給食施設、スーパーの鮮魚コーナー、と様々な環境で働いた経験を経て、現在旅館で板前をしております。
特にどんな料理が好きか、というこだわりが無く、色々な料理を作れるようになること自体が楽しかったため多くの職場で多くの料理を学びました。
ただし、和食店に勤めていた最初の2年間は正直楽しさよりも大変さの方が大きかったように思います。
社会人としての経験も浅く、技術的にも未熟であった自分はことあるごとに失敗しては先輩に叱られたり、休憩時間を返上して料理のやり直しをしたりしていました。
また、そういう失敗を通して仕事に対する姿勢や技術を学ぶことが出来たのも確かです。
最初の大変だった時期があるからこそ今でも楽しく調理師の仕事をすることが出来ていると思います。
その時期を過ぎると料理を作ることが楽しくて仕方が無くなりました。

教わった料理を作れるようになることに喜びを感じるようになります。
この感覚はその後どこで働いても持ち続けていたし、今現在も持っています。
例えば外食をした際に美味しかったメニューなどを「どうやってつくってるのか?どうすれば自分でも作れるのか?」を検証して実践したりします。
和食店に居た頃に、包丁の技術は丁寧に教わることが出来ましたが、当然スーパーの鮮魚コーナーには鮮魚コーナーの魚のさばき方があります。
また洋食店では仕込みの段取りからして全く和食とは別物で、給食施設では一度に作る量が桁違い、と戸惑う場面は多々ありました。
一つの職場で通用した常識が別の職場では通用しない、という場面は飲食業界のみならずあると思います。
ただし、調理師の仕事の場合、調理の基礎となる「食材を洗う、食材を切る、火を通す、味をつける、盛り付ける」などはどの職場でも共通しています。
一つの職場で正しい基礎を身に付け、周囲から一人前と見なされれば、料理に関する様々なことを楽しく学べるようになります。
最後になりますが、常に食べ手のことを忘れないでください。
「自分の調理スキルを誇る」のが最終的な目標では決してありません。
食べ手を満足させることが自分達調理師の存在意義です。
そのために学ぶことが大切なのであり、食べ手が満足してくれるからこそ学ぶことが楽しくて嬉しいのだと思います。
自己満足に陥ると、必ず学ぶことを怠ってしまいます。身近な人間に自分の作る料理を食べてもらうのは効果的です。
味の濃淡や、盛り付けの色合いなどに対し、客観的な意見を言ってもらえます。
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