栄養士の勉強内容 4つの科目と15の学ぶ事

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- 栄養士の勉強内容を知りたい人
対象者の方は続きをお読みください。
ここでは栄養士の養成学校で学ぶ事、勉強する内容とそれがどんな知識で役立つものなのかを解説します。
栄養士資格で学ぶ内容
① 栄養学
栄養学では、その名の通り、各栄養素について、そしてその栄養素がどのように体内で消化・吸収され、健康にどのような影響を与えていくのかなどを学びます。
また、ライフステージ栄養学といってー
- 乳幼児
- 学童期
- 思春期
- 壮年期
- 妊産婦
- 高齢期
など、年代別にどのような栄養素が必要でどのように摂取をしたらよいかを勉強します。
栄養学は他の科目を勉強する上での基盤となります。
栄養士としてどの職業に就くにあたっても必要な学問であると言えます。
例えば病院の栄養指導では、その患者にどの栄養素が過剰で、どの栄養素を補わなければいけないのかを伝えます。
過剰な栄養素がどうして健康に悪影響を与えているのか、改善するために摂取する栄養素はどうして大切なのかを患者に事細かに説明するためには、栄養素の基礎知識、 栄養学が非常に重要なのです。
② 食生活論
食生活論では、 食の原点や食文化を学び、最終的に食生活が自分の生活にどのように影響を与えるのか、その役割の大切さを学びます。
栄養士は食の専門家として、食生活とは何か、どのような食生活が望ましいのかを詳しく知る必要があります。
近年、脂質や塩分の摂取過剰により生活習慣病になる人々が増加しています。
また、朝食を欠食する子供が増え集中力の低下が問題となるなど、食生活の乱れによる健康被害が増えています。
その中で重視されているのが、食生活論でも学ぶ「食育活動」です。
食生活を今一度改め、栄養士による正しい知識を学ぶことによって食生活を改善し、健康を目指すために食育はとても大切です。
求人の詳細は管理栄養士、栄養士の求人の保育園をご覧ください。
③ 臨床栄養学
臨床栄養学は、様々な疾病と栄養の関係、栄養の面からの疾病の治療・予防について学びます。
傷病者に対しては、患者個々の身体状況・食生活の乱れ・栄養バランスの偏りなどから栄養状態を把握して、そこから適正な栄養管理を指導する方法を勉強します。
病院・介護・福祉施設では、
- 糖尿病
- 高血圧
- 腎臓病
- 胃潰瘍
- 摂食障害
- 精神疾患
など様々な疾患を抱え、栄養指導を必要とする方々がいます。
疾病別の栄養指導法を学ぶ臨床栄養学はここで発揮されます。
臨床栄養学については臨床栄養学実習の感想や学んだ事 テーマや目的の持ち方 ⅠⅡで行う事をご覧ください。
求人の詳細は管理栄養士、栄養士の求人の病院をご覧ください。
④ 公衆栄養学
公衆栄養学では、国民の健康・栄養問題に関する動向を学びます。
また、 集団や地域における人々の健康・栄養状態や社会・生活環境の特徴に基づいて、どのように国民の健康を改善していくのか、どのような栄養政策を行ったらよいのかを研究する学問です。
人々のライフスタイルや価値観が多様化した現代において、健康や食生活問題の解決には、地域全体、住民参加型の公衆栄養活動というものが重要視されています。
例えば、高血圧患者が多いという統計結果が出た地域では、役所や保健所などの行政機関が「減塩プログラム」などを企画し、公衆栄養活動として高血圧患者を減少させることを目指す活動を推進します。
公衆栄養学についての詳細は公衆栄養学の過去問解説と出題のポイントや勉強法ガイドライン変更点をご覧ください。
⑤ 栄養指導論
栄養指導論では、正しい栄養学の知識を基盤に、食事療法・運動療法の指導方法を学びます。
また、 心理学に基づいたカウンセリング方法、コミュニケーションの取り方も勉強します。
生活習慣病が増加している近年では、特定保健指導が盛んに行われており、その活動の中で管理栄養士は栄養指導者として重要なポジションを担っています。
また、特定保健指導だけでなく栄養指導は様々な場所で行われています。
病院では「甘いものがやめられない糖尿病患者」や「重い拒食症患者」に対して、食事療法がストレスにならないために、栄養指導論で学んだカウンセリングやコミュニケーション方法をもとに食事指導をします。
⑥ 食品学
各食品が植物性食品(穀類・いも類・野菜類・果実類など)、動物性食品(魚介類・肉類・卵類など)など、どの項目に位置するのかを学び、さらにその食品がどのような栄養素や酵素が含まれているのかを学ぶ学問です。
また、 各食品がどのようにすると栄養素が吸収されやすいのか、失活されてしまうのか、食品の組み合わせによって体内での代謝に影響があるのかなどを実験を伴いながら科学的に学びます。
栄養学と同様、食品学も、栄養士としてどの職業に就くにあたっても必要な学問であると言えます。
また、栄養学を基盤にし、食品学を学び多くの食品の特徴や欠点などを知ることで、栄養指導もより的確になります。
⑦ 食品加工学
味噌や醤油、ヨーグルトやチーズなどは食品を加工して作られた加工食品です。
加工食品がどのような工程で作られているのか、その工程の加工技術や微生物、酵素の作用などについて学びます。
また、食品の包装や貯蔵方法、殺菌方法などについても詳しく勉強します。
食品加工学は、デスクワークより実験を伴って学ぶことが多い科目の一つです。味噌や豆腐などを一から作り、普段何気なく口にしている加工食品がどのように作られるのか、体験しながら学習する面白い科目です。
食品関係の企業では、食品の開発をする際に、この食品加工学が役立ちます。
⑧ 食品衛生学
食品衛生学では、有用に作用する微生物はもちろん、有害に働く微生物や食中毒菌、病原微生物について学びます。
また、 食中毒・食品添加物などの事実を認識し、食品汚染事故の対策と予防について考え、食品を安全に管理できる知識を習得します。
大型食中毒の発生や輸入農産物の農薬問題、抗菌性物質の残留など、食品の安全性確保が大きな問題となっている現代では、非常に重要な学問です。
保育園・学校・企業の食堂・病院給食など、様々な大量調理の現場では食中毒や衛生面に特に注意を払うため、食品衛生学の知識が生かされます。
⑨ 食料経済
食糧経済学では、食品の生産から加工、流通、販売、消費に至るまでの食にかかわる諸問題を経済的側面から学びます。
食糧経済をもとに、食品メーカーでは現代の消費者にどのようなニーズがあり、どのような商品が人気を集めるのかを検討したりします。
外食産業でも、リーズナブルな値段で栄養価の高い定食や弁当などの考案が行われています。
利便性があり欲しい時に欲しいものが手に入る現代では、食生活の乱れが問題視されています。
学校などでは、保護者を対象に食品の選び方などを食育の一環として行っているところもあります。
⑩ 公衆衛生学
地域社会の努力により、環境を整え、疾病を予防し、人々の健康を守り推進していく方法を学びます。
また、 少子高齢化・生活習慣病対策、伝染病(感染症)予防、公害対策など、日本の公衆衛生の問題を理解し、解決に導く能力を習得します。
保健所や保健センターの管理栄養士は、公衆栄養学・公衆衛生学の知識を生かしながら行政栄養士として保健行政を行っています。
行政栄養士は、市町村の健康推進計画を立てたり、食育推進計画などの策定支援、専門的な栄養指導、特定給食施設などに関する指導、給食施設に従事する栄養士・管理栄養士の指導など、様々な業務を行っています。
⑪ 調理学
調理は食品を食卓に供するための最終過程であり、食品をおいしく、安全で衛生的に、そして栄養効果を高めるために行われます。
調理学では、 調理に必要な調理特性や食品の調理特性について、科学的に学びます。
また、食材別の調理方法、調理器具の名称と使用方法など、調理関係全般を勉強します。教科書上の勉強とともに、調理実習を通して体験しながら学ぶのも調理学の特徴です。
調理学は名の通り、病院や学校、社員食堂など、調理の現場で知識が生かされます。
大量調理に向き不向きな料理を理解し、どのような料理の組み合わせが良いのかを考え組まれる献立も、調理学が基盤にあることで作成できます。
調理や献立作成の詳細は管理栄養士、栄養士で献立作成を学びなおしたい。勉強法とコツをご覧ください。
⑫ 給食管理
給食管理では、給食に関する栄養管理、食材料管理、衛生管理、施設設備管理、作業管理、労務管理、原価管理などを学習していきます。
管理栄養士は、 疾病の治療促進や予防、健全な成長、健康の保持・増進を図る役割を担うため、各給食施設の対象者に質の高い食事を提供し、給食を通してより良い食習慣を定着させるために、給食管理はとても重要な科目です。
保育園給食、学校給食、病院給食など、様々な給食現場で給食管理の知識が必要です。
給食は生きた教材として食育の一環として活用されているため、どのような給食を提供し、摂食者に給食でどのようなメッセージを伝えるかを考えるのも、給食管理の知識が生かされます。
給食管理については給食管理の流れと衛生管理で注意するべき事やりがい等をご覧ください。
求人の詳細は管理栄養士、栄養士の求人の給食会社をご覧ください。
⑬ 解剖生理学
解剖生理学では、人体を各系統別(消化器官系・呼吸器系・循環器系・泌尿器系・内分泌系・筋肉と骨組織系・造血系・免疫系・神経系)にわけてその構造と機能を学びます。
体に取り入れられた栄養素は、人体のどの器官でどのように消化・吸収され、臓器の栄養になり、代謝されたりするのかという知識を養う学問です。
一見、医師が勉強するような難しい科目のように感じますが、栄養学は医学の一部であることから、栄養素が消化・吸収・代謝される人体について学ぶことは、管理栄養士としてとても重要なのです。
解剖生理学を学ぶことで、栄養学で身に着けた栄養素の知識、臨床栄養学で身につけた疾病の成り立ちなどが結びついてきます。
⑭ 生化学
生化学では、生体が生きている仕組みを理解し、栄養素や生体成分の化学的な性質と、体内での機能・代謝の基礎を学びます。
健康と密接に関わる生体の仕組みとして、恒常性の調節機構、栄養素の消化・吸収・代謝の概要、食物成分から人体に必要な成分への変化を担う酵素と経路、免疫系や遺伝についても詳しく勉強します。
生化学の知識も解剖生理学と同様で、栄養学・臨床栄養学と結びつけ医療の現場で発揮することができます。
近年では、がんの治療を生化学の知識をもとに、がんセンターなどで医師などと共に研究する管理栄養士も見られます。
⑮ 運動生理学
運動生理学は、人間が運動やスポーツを行った時の呼吸・循環・代謝・筋肉・血液などの機能がどのような変化を示すのか、また体にどのような影響を与えるのかを学びます。
運動と生活習慣病はとても密接な関係にあります。
管理栄養士は、 日々の運動から健康を保持・増進の目的で運動を促すために、この運動生理学の知識を身に付ける必要があります。
病院の栄養指導では、食事療法とともに運動療法が必要な場合もあり、運動療法を指導するにあたって、この学問の知識が生かされます。